騎士の奏でる鎮魂歌

□聖職者の鎮魂歌
3ページ/30ページ

「そうね………。」
普段マルディンは昼を過ぎた頃に姿を見せ、大聖堂で祈りを捧げる。
この日のように朝から居るのは本当に珍しいことだった。
「…あら?」
庭に、キラリと光る物が見えベルガがそっと拾う。
「………それ、マルディン様のよ。」
横からそれを覗き込んだハルカがそう言って、ひょいと奪う。
銀の鎖のついたそれはロケットだった。
「早くマルディン様に
「見ちゃえ!」
ベルガが全部言う前にハルカが笑ってロケットを開ける。
「だ、ダメよハルカ!勝手に人の………-----!」
…ロケットを見たベルガは、美しい女性に目を奪われた。
歳はおよそ20半ば、金の長髪に金の瞳、柔らかい微笑み。紅を引いたような真っ赤な唇。
どこからどう見ても、完璧に美しい。
椅子に座った女性の傍らには、マルディンがいた。幸福そうな微笑みを浮かべ。
「………、…この人、誰だろうね。」
「姉ですよ。」
「にしては似てないわ?」
「まぁ、腹違いの姉弟ですから。」
「両親もさぞ美しいんでしょうね。」
「はい、優しく美しい人達でした。」
そこではっとしたハルカが急いで横を見遣る。
ニコニコと微笑むマルディンが立っていた。
ハルカは顔色をなくし、ベルガに至ってはこの世の終わりのような顔をして冷や汗を流している。
微笑んだままハルカの手からロケットを取り、首に提げて服の下に隠す。
「…姉は私と違って、とても優しかったし、光に満ちていた。」
そっと懐かしむように瞳を伏せ、すぐに開く。
「さぁ、そろそろ教会に入りなさい。祈りの時間ですよ?」
ニッコリ笑っているマルディンに、二人は慌ててお辞儀してからぱたぱたと走っていく。
「………義姉上…。」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ