多目のお題

□二人でほのぼの50題
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(新八が初めて万事屋に来た日)


「…あ?」

何だこの足袋。
客か?
勝手に人ん家入るとはいい度胸だな。


「あ、こんにちは。」

事務所に入ると眼鏡がいた。
何故か悠長にお茶を啜っている。
おいその湯飲み、どっから出してきた。
見たことねぇぞそんなん!

「あ、あのー…」
「そうそう。着流しあっちでくしゃくしゃになってたんで、洗って干しておきましたよ。ついでに少し掃除もしときましたから」
「…え?…ああ!君、新八!新八くん!!」
「……ひょっとして僕のこと忘れてました?」

むっとした顔の新八くんがこちらを睨んだ。
そうだそうだ。こいつ昨日ちょっと助けたら万事屋で働かせてくださいって言ってきたレジも打てないダメガネ少年じゃないか。

一晩ぐっすり寝たらすっかり忘れちまったよ全く。だって印象薄いんだもんこの子。


「ごめん、片付けてくれたんだ。悪いね」
「まー…良いですけど。それよりご飯作ってみたんですけど、坂田さん食べませんか?」
「はい?」
「台所見たらお菓子しかなかったんで。冷蔵庫もプリンとイチゴ牛乳ばっかりだし…一人だからってちゃんとしたもの食べなきゃだめですよ」
「…お、おぅ」

と、いうことで。
ソファに座って待っていると、程なくしていい匂いが漂ってきた。

お。親子丼じゃーん。

「どうぞ。鶏肉安かったんです」
「…料理できんだ」
「姉があぁ見えて酷いんで。自然と僕が色々作るようになってて」
「ん…、んまいよ」
「…良かった。たれ甘めにしてみたんですけど、お好きですか?」
「うん。俺ぁ好きだよこれ。ありがとな」
「はい、どういたしまして」

…あ、笑った。
しっかりして大人びてるからかなー、こうやって笑うとやっと年相応に見えるというか。
うん、かわいいじゃん。

……ん?

「う、やっぱりちょっと僕には甘かったかも…。ところで、お仕事ってやっぱり電話とか訪問を待たなきゃいけないんですよね…
ん?坂田さん?」
「あ?お、おー…」

どうしよう。
何か嫁さんもらったらこんなんなのかなーとか一瞬考えてしまった。
いやバカか俺。まだ若い少年をかわいいなんて微笑ましく思うのは普通のことじゃねえか。
考えすぎ考えすぎ。嫁さんとかないない。
第一俺にはそんな趣味はない。

「そういやさっき、どこ行かれてたんですか?その袋は?」
「…あー、これは」

―ガサガサ
「…イチゴヨーグルト?」
「ん…食べる?」
「え、でも1つしかないですよ」
「…いいのいいの。これで2人分だから」

やった。ありがとうございます。
新八くんがまた笑う。
何だか、こうして好きなものでも共有するっていうのはいいことかもしれない。と思った。
だって新八くん嬉しそうだし。そうすると俺も嬉しいし。

スプーン持ってきますね、と立ち上がった新八くんの環境に適応する早さに少し驚きながら
彼の万事屋の銀のスプーンと俺のプラスチックの小さいスプーンで、二人仲良く分け合ってヨーグルトを食べた。


そんな、ほのぼのとした昼下がりの
ちょっぴりキュンとした胸の痛みに心底悩まされることになるのは、また少し先の話。


――――――
何も確認せずに書き殴ってしまった…

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