メンデル研究室


□敵軍の歌姫(仮)
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数時間前、アークエンジェルの格納庫はものものしい雰囲気に包まれた。



デブリ帯で物資の補給をしている際、キラが救難信号を出すポッドを発見し運んできたからだ。




与えられた部屋に案内する為、キラと“ラクス”に扮するイザークは通路を歩いていた。

地球軍の制服をみるだけで虫酸が走るイザークは擦れ違うクルーを無意識の内に睨みつける。

前を歩くキラは、女性にしては随分と端正な顔立ちの彼女がずっと無言なのが気にかかり、おずおずと話しかける。

「ラクスさん、気を悪くされないで下さい。ザフトじゃないこの艦の中では、コーディネーターは珍しいので…」

「だろうな」

ポッドが救出されるまでの簡単な経緯と尋問を終えたラクスを艦長室から“軟禁”する士官室へ案内するのは同じコーディネーターであるキラの役目だった。


いずれ脱出ルートとなりうるMSデッキ、艦長室、部屋の配置や通路を頭に叩きこむイザークは、前を歩く華奢な少年に声を掛けた。

「この艦はどの程度の軍人が居る?」

「えーと…あまり把握してないんです。人手が足りなくて、やれる他の作業も皆で手伝ったりしてます」

「…この艦を守る戦力は?」

「戦えるのは、メビウスっていう機体と後はストライクだけですけど…ラクスさん」

キラが振り返る。

情報収拾に急ぎすぎた事に怪しまれたかと内心、舌打ちをしたイザークは無関係を装う為、無表情でキラの顔をみた。

−こいつ、あの写真の!!

足付きに来て早くも、プライドを傷つけた敵に会えた事にイザークは体が歓喜で粟立つ。

「心配しないで下さい、この艦は守りますから…。それより、アイドルって大変なんですね?歌いすぎで喉を痛めているなんて」

「…まあな」

誤魔化しようの無いこの声は、イザークが尋問の際についた嘘。


アイドルらしからぬ言葉遣いは、普段使う人避けなのだろうとキラは思った。
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