フェブラリウス市市長室
□夢幻蝶
1ページ/5ページ
皆で夜桜を見に行く、ついでの飲食だった筈。
…この、飲んだくれめらが
久々の休暇でハメを外したくなる気持ちは分かるが、酔うだけ酔って人の家に上がり込む気なのだろう。
酔ったラスティに絡まれているアスラン、笑うミゲル、オロールとニコルは談笑している。
「イザークもこっち来いよ」
「遠慮する」
ミゲルの誘いをピシャリと断り、酒乱の渦に巻き込まれる前に寄り掛かっていた木から体を離した。
奴の姿を探して周囲を見渡せば少し離れた桜の木の下にディアッカは居た。
軽く息を吐き出すとディアッカの元へ歩き出す。
零れ落ちそうなくらい満開の桜。
夜風が柔らかく頬を撫ぜる度、宙に舞う花弁。
幻想的な世界でディアッカは一人、舞っていた。
これが以前言っていた日本舞踊なのだろう。
着物を着て手に扇子を持って"舞う"んだ、と嬉しそうに語っていた。
思わぬ形で見せられた"舞い"をもっと見ていたいと思ったが、全然見られている事に気付いていないらしいディアッカと、案外一人でも楽しんでいるのかと思うとイライラが募ってきた。