メンデル研究室
□君の姿はボクに似ている
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体の熱を冷ますようで、潮風が心地良い。
甲板に出て正解だった。
戦闘後の疲労感は、偽物。
周囲に合わせるかのように「疲れた」と自分に云いきかせ、心でそう思っているだけだった。
実際、今からでも出撃出来る体力は十分に残っていた。
「…戦闘兵器みたい」
スーパーコーディネーターとして自分を作りあげた科学者達はそのつもりで作ったのかもしれない。軍事目的。
考えただけで気が重くなってくる。
「何が?」
自分を半ば蔑むように呟いただけの言葉に、背後から反応を返された。
驚いて後ろを振り替えると、アークエンジェルクルーとしてはまだ馴染みの浅い人物が立っていた。
「ただの独り言だよ。あまり動き回ると傷に障るよ?」
アウルはシャツの上からオーブ服を羽織った姿で、くせっ毛の髪を潮風に揺らしていた。
「もういい加減治ったって」
「……良かった」
「?」
「初めて笑ってくれた」
急に思いもよらない言葉を云われ、アウルは照れ隠しで「何も無いのに怒る奴があるかよ」と呟いた。
だが、確かに此処へ来て笑ったのは初めてだったのかもしれない、とアウルは思った。