メンデル研究室
□雨宿り
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午後、雨が降るのは知っていた。
「降り止まない、よなぁ…」
ただ、傘が盗まれてしまっただけ。
本降りになり始めた雨の中、無理に走って帰ったら最後、わざわざ残ってまで作成したプリント類は確実に滲んでしまうだろう。急用で放課後、残れなくなった友人に頼まれた仕事なだけに、台無しにすることは許されない。
「帰りたいけれど…」
独り呟いた声が雨音に掻き消される。
キラは雨宿りしていたドーム型の遊具の中から、あちこちに出来た水溜りを見て途方に暮れていた。
放課後、残って作業をしていた為『合い傘』してくれる同級生も見つからず、下校途中、降りだしてきた雨から逃れるように公園まで走ってきた。
悪いタイミングは重なるもので、自分を待っていてくれていた姉のカガリと幼なじみのアスランを今日に限って、先に帰らせてしまった後だった。