フェブラリウス市市長室
□夢幻蝶
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ディアッカが珍しく酔っていた。
「貴様も飲み過ぎだ」
「そんなに飲んでねぇよ。それよりさ…イザーク、俺に見惚れてただろ?」
「なっ…寝ぼけた事言うな」
言葉とは反対に顔が熱くなる。
脳裏に焼き付いて離れないディアッカの舞う姿は、桜の花弁が舞う幻想的な世界で妖艶な雰囲気が醸し出されていた。
思い返すだけで色々な想いが溢れてくるだけに、余計に『見とれていた』と言い難かった。
「日本舞踊、良いだろ…?桜を見ると思い出すんだ、日舞の先生とか他のちびっ子とか」
「そうか…」
気持ちを誤魔化すように、頭についた花弁を取り払ってやるとディアッカはくすぐったそうに頭を捻った。
「擽ったい」
普段見せない甘えた態度に心臓が跳ね上がる。
−イザーク親友だし
いつの日だったか何気なく言ったディアッカの言葉が思い返される。
その時はつい、冷たくあしらってしまったが、素直に嬉しかった。
「…ディアッカ」
だが、親友の立場なのが段々苦しくなってきたのかもしれない…。
それ以上を求めてしまう。
気付いた時には、ディアッカの首に腕を回していた。