星にいのりをーReleaseー

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蓮との激戦から一夜明け、病院に泊まっていた優梨たちはまだ眠っていた。

「……?」

一番最初に起きたのは葉だった。右側を見ると、阿弥陀丸の位牌を抱えて眠るまん太とベッドに突っ伏して寝ている優梨がいた。二人とも葉が心配で家にも帰らず、ずっと着いていたのだ。
そんな二人に感謝しつつ、歩く為に緑色のスリッパを放り投げた。

「…んぁ!?」

投げた時の音に驚き、まん太は目が覚めた。
若干涎を垂らしていたものの、まん太の奇声で優梨も寝惚け目だが起きた。女の子として涎を垂らして寝るのはどうかと思うが。

「ふわぁぁ…おはよぉ」

「もう起きれるみたいね」

まん太は大きく伸びて目を擦り、優梨は地につけたままだった膝を叩いて立ち上がり、近くの椅子に座った。

「あぁ、なんとかな。それよりいい天気だぞ」

確かに窓から入ってくる朝日は何とも気持ちいい。昨夜の戦いなど知らん顔したみたいな陽気だ。

「……あいつ…蓮は?」

葉は気になっていた事を二人に尋ねてみるが、どちらも「分からない」と首を横に振るだけだった。

「そっか…………阿弥陀丸!」

とりあえずそれで納得したらしい葉は、阿弥陀丸を呼んだ。
すると何も無い空間から阿弥陀丸がどろん、と姿を現した。

『気分はどうでござる?』

「うーん、悪くないけど身体がそこら中痛いよ…」

『そこから強くなるでござるよ』

阿弥陀丸はたしなめる様に言ったが、葉はちょっとうんざりした風に返した。

「いいよ、弱くて…痛いのしんどいからさ」

相変わらずその何ともお気楽な答えに四人が笑っている時、突然凛とした声が響いた。



「ホント、緩いわね。先が思いやられるわ」

声のした方に目を向けるとそこには黒いワンピースに赤いバンダナを明るい茶髪に巻いた少女が、腕組みをして立っていた。
どことなくその表情は怒っている。

とりあえず一番空気の読めるまん太が少女の方へ歩いた。

「えっとあの…どちら様で?」

少女はまん太にちらりと目をやると、


「うるさいわよ、水饅頭」

ずっぱり言ってのけた。悪びれた様子は全くない。

「み…み…みず…!?」

まん太は顔を真っ赤にして怒っているが、少女は全く気にも留めず葉の方を向いた。

「久しぶりね、葉」

少女の姿を見た葉は少し後退りし、ぎこちない笑顔で返事をした。

「や、やぁ…アンナ…」

どうみても顔見知りな二人に優梨は首を傾げた。今まで葉からこんな女の子の知り合いがいるなんて聞かされてないのだ。まぁ聞く必要もないだろうが。

「…葉君の友達?カワイイ女の子だね」

優梨はニコッと笑って葉に問いかけたが、葉は不自然に目を泳がせた。
これだけは、これだけは想いを寄せた優梨に知られる訳にはいかなかったのに。

「お…幼なじみ…」

なんとか誤魔化せないか、と思ってあながち間違ってない関係を答えたが、望みはあっさり打ち砕かれた。


「許嫁よ。」


アンナ、と呼ばれた少女は何一つ包み隠さず言い切った。


「いい」

『なず』

「け!?」


「「『許嫁―――――!!?』」」


人間、驚き過ぎると共感した者と同じポーズをとるものなのだろうか。
まん太と優梨と阿弥陀丸は三人揃って赤面しながら同じポージングで驚いた。

「怪我、大した事なさそうね」

「「『………………』」」

そんな彼らの反応を総無視して、アンナは葉の怪我具合を見る。見事なまでのスルーだ。
すると彼女は、今度はちらりと優梨の方へ目を向けた。



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