星にいのりをーReleaseー
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出雲・三瓶山。
葉は幼い頃から由緒あるシャーマンの一族、麻倉家の跡継ぎとして師であり祖父でもある麻倉葉明と共に山中で修行をしていた。
だが葉は修行を始めて早4年経っても未だ地霊も召喚できず、いつも葉明が堪忍袋の緒が切れたと謂わんばかりに怒る。
そしてそれに対して葉はいつも「シャーマンになんてなりたくない」と、己のビジョン(平たく言うと将来の夢)を語ってみせた。
ちなみにその頃(当時4歳)のビジョンとは、毎日好きな音楽を聴いて、のんびり気持ちよく暮らす事らしい。
そして祖父の式神によって川に落とされるのが地味に日常茶飯事になっていた。
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「全くお前という奴は…そんないい加減な考えだからいつまで経ってもただ霊が見えるだけの落ちこぼれなのだ…」
焚き火をしながら葉明はいつも口々に言っていた。
「いいもん!シャーマンなんかなりたくないんだから修行なんか嫌だよ!」
「……」
幼い葉と祖父の葉明は毎日そんなやりとりばかり続けていた。
「……麻倉の人間でさえこれとは…人々が霊や土地に住む精霊の事を忘れて行くのも無理も無い事かもしれんなぁ…」
そう言うと葉明は立ち上がり、辺りを歩き出した。
「人が増え、町ができるのはごく自然の有り様…だから儂は、別に自然破壊をどうこう言うつもりは無い」
葉明は小高い崖に飛び乗り、その向こう側を見た。
田舎というにはあまりにも都会的になってしまった街並み。だが、昔から生きる人間として葉明はこの変化に憤りさえ感じていない。
「しかしな、どんなに文明が発達しても人には地球上の全てを把握することなどできん。
人の行いが巡り巡ってこの地球にどんな作用を及ぼすか…最後の所は誰にも分からん…
だからこそ、人にはこの地球に生きて行く為の道標が必要なのじゃ」
「なぁに?道標って?」
葉は近くにあった石をいじりながら尋ねた。
「全知全能にして究極の霊…一般に神と呼ばれる存在…
精霊の王の事じゃ」
「精霊の…王…」
葉は葉明の言葉に呆然と呟いた。
「姿形は様々に伝えられてはいるが…実際に会う事のできた人間は、過去に数人しかいない。
その数人の人間が精霊の王の意思を知り、人々に伝え、世の中の調和を保って来たのだ…
人々が己の欲望のままに動き、滅びの道に走らぬ様にな」
「…じいちゃん、誰なの?その精霊の王様に会った奴って…!」
「それはな…全てのシャーマンの能力を持ち、精霊の王と一体になれる人間…
歴史上、『救世主』と呼ばれし者達…シャーマンの王……
『シャーマンキング』じゃ!」
その答えに葉はふるふる震えている。
「シャーマンキング…!!か…かっこいい――!!
オイラもなれるかな!?そのシャーマンキングに!」
間。
「かっこいい」といった拍子に上に投げた石が葉明の前に転がった。
「……ぶはははは!!無理じゃ無理じゃ!なろうと思ってなれるもんじゃない!」
葉明は葉の爆弾発言に大爆笑するが、当の本人はもうそれ(シャーマンキングという存在)にメロメロだ。
「いいや、オイラはシャーマンキングになる!もうどんな修行にだって文句は言わねぇ!オイラ、その何でも知ってる精霊の王様と友達になって…!
毎日のんびり暮らすんだ―――!!!」
葉明は、もう苦笑すらできなかったという。
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「と、いう訳で、オイラは真面目に修行を始めたのだ!」
その話に三人は顎が外れる程愕然とした。
(((な…なんて不純な動機だ……!!)))
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