星にいのりをーReleaseー

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『霊の力を全力まで引き出す憑依100%の状態…だがお前は、せいぜい10%が限界だ。

俺とお前では…シャーマンとしての格が違う』


+++

蓮との戦いで負傷した葉は木刀の竜馴染みの病院に入れられていた。
身体には包帯が巻かれ、ずっと気を失っている。

阿弥陀丸は悔しそうに、眉間に皺を寄せた。

『葉殿……拙者が不甲斐ないばかりに……!!』

+++

まん太は病院の待合室で、竜の話を聞いていた。

「あの先生の腕は確かだ…俺達も、いつも世話になってる。肩の傷も、バイクでコケたって事にしてくれたよ」

竜は怪我をした葉の為に骨を惜しまず手を尽くしてくれた。
今までの事を考えるとにわかに信じられないが、彼のお陰で葉が一命をとりとめたのは確かだ。そこは感謝しなければ。

「ありがとう…」

まん太は一先ずお礼を言った。

「よぉ、あいつら一体何なんだ?」

「あんな刃物を振り回すなんて、正気じゃねぇ!」

竜の仲間達が口々にまん太に尋ねるが、まだシャーマンという存在を知って日が浅いまん太に聞かれても無理難題だ。

「話しても多分…理解してもらえないと思う…」

「いいから続けろよ!とにかく、聞きてぇ!」


「行くぞ」

竜が立ち上がり、仲間達に帰る様促した。

「え?でも…」

「さっきのを見りゃ分かるだろ。あれが全てだ。俺達が入り込める世界じゃねぇ…」

竜の仲間達は多少戸惑ったが、出口に歩き出した。

「じゃあな」

「…色々、ありがとう」

竜は右手を軽く上げて、仲間達と去って行った。



「…優梨ちゃん…」

まん太は隅の方で膝に顔を埋めて眠っている優梨に声を掛けた。
相当応えたらしく、一時間程前までずっと葉に付いていていたのだが、すっかり泣き疲れてしまったのだ。

無理もない。
内気な上に引っ込み思案で友達もなかなか作れずにいた優梨が、初めて自分から友達になりたいと思って一歩踏み出したきっかけは葉なのだ。
彼はきっと彼女の中で、とても大きくて大切な存在なのだろう。
その葉があんなにも傷付いてしまったのがとてもショックで、何もできなかった自分が許せないのだ。


「…葉くん……」

起きたのかと思ったら、優梨は眠りながら涙を流していた。可哀想に、夢の中でも葉は傷付いているのだろうか。

「…葉くんごめん……ごめんね………」

「………」

まん太はどうやって優梨を慰めたらいいのか分からなかった。無力なのは、自分も同じだった。不思議な力を持つ葉と友達でいたって、普通の人には見えない幽霊が見えたって、結局二人はただの無力な人間なのだ。

+++

暫くして優梨が目を覚ますと、まん太は葉の様子を見に行こうという事で彼の病室に来た。
扉を開けてみると、葉は起き上がりいつもの装備(ヘッドホンと熊の爪)を身に付けていた。

「よぉ!」

葉は元気に片手を上げてまん太と優梨を見た。

「葉君!」

「よかった!目が覚めて」

まん太と優梨は嬉しそうにその場にあった椅子に腰かけた。

「あんまりよく覚えてないんだけど…竜が助けてくれたんだっけな?」

「うん!でもその前に…」



まん太の言う通り、竜が葉に手をさしのべる前に優梨が倒れた葉と武器を構えた蓮の間に果敢にも両手を広げて割り込んだのだ。

優梨は勝負の邪魔をされて怒る蓮の恐ろしく鋭い視線に怯えながらも逆に睨み返していた。
その間に竜の手下達がバイクのヘッドライトで蓮の目を奪い、隙ができた時、竜は葉を病院に連れて行ったのだ。



「案外いい奴かもね…木刀の竜って。優梨ちゃんも、怪我がなくてよかったよ…」

「そっか…ありがとな、優梨。竜にも今度会ったら礼を言わなきゃな」

「そうだね。でもごめん…結局私…何もできなくって…」

優梨はまた顔をしょんぼりと伏せてしまう。
よく見ると目は真っ赤で顔色も良いとは言えない。大分心配をさせてしまったと感じた葉は、うつ向いた優梨の頭を撫でてあげた。
こういう時女の子を言葉で励ます方法をよく知らないから、とりあえず安心させようとしたのだ。

「…怪我は大した事無いって先生が言ってた」

「あぁ、阿弥陀丸がギリギリかわしてくれたお陰だ」

三人は阿弥陀丸の方を向いたが、彼の表情は優梨と同じくしゅんとしていて浮かない。

『止めて下され…こうなったのは、拙者の不甲斐なさ故…』

「辛気臭い顔すんな。お前がいたからこの程度で済んだんだ。でなきゃ腕、斬り落とされてたよ」

『葉殿…』

「気にすんな」

『…面目伝いもござらん…!』

また顔をしかめ、悔しそうな表情をする阿弥陀丸。侍という立場から、守るべき主を守り切れなかった悔しさはひとしおだろう。

「でも…なんだって蓮は葉君を狙ってきたんだろう?」

「言ってたじゃん?

『シャーマンの王になるのは自分だから他のシャーマンはいらない』ってさ」

言いながら葉は、ふかふかの枕に身体を預けた。

「っでもそれが葉くんを殺す理由になるなんて…!」

優梨はいきり立って声をあげたが、理由として思い当たる『シャーマンの王』という存在に疑問を抱いていなかったことに気付いた。

「だから…シャーマンの王って一体なんなの?」

葉はベッドでごろんと首を傾げ、んー…と考え込む。

「…それが、オイラにもよく分からんのよ。オイラも昔じいちゃんに一度聞いたっきりだったからさ…

…10年ぐらい前かなぁ…」



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