星にいのりをーReleaseー
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『シャーマン』
それは自らをトランス状態へ導き、神・精霊・死者の魂等と直接交遊する者。
シャーマンは、それらの力を借りることで病気の治療や政治を司る。
古代において、シャーマンは人間社会の中心であり、そして今尚シャーマンは世界中に存在している。
「なんだ?その本」
今日は朝から綺麗な晴天。現在地点は墓地にある丘の大木の下。木の葉が繁る大木は丁度良く日の光を遮るので、ここは涼しくて気持ちいい。
そんな場所を占拠する様に座っているのは麻倉葉とその友達、小山田まん太と殊音優梨だ。
「ふふん。知識の泉『万辞苑』さ!」
「ふぅん」
「まん太くんいつもそれ持ってるね…重くない?」
「平気さ!それに持ってないと落ち着かないんだ」
まん太がシャーマンについての記述を読んでいたら葉から質問が来たので答えたが、その返事は興味なさげ。遠回しに自分のことだと言うのに全くだ。
「でもよく分かんないんだよねー…」
「何が?」
「シャーマンさ!これにも載ってる位だから、超能力者…とかとは違うと思うんだけど…優梨ちゃんはどう思う?」
「うーん…私もあまりピンとくるものがないかな」
まん太と優梨はしばらく唸りながら考えていたが、まん太が痺れをきらした様に話した。
「ねぇ」
「ん?」
「シャーマンって何?」
「これ」
まん太の質問に葉は自分を指差して答えた。
「ぶつよ!?」
「はは…ま、その本に書いてある通りなんじゃない?オイラの家族も、みんなそれっぽい仕事してるし」
「君はどうなの?」
「……オイラは政治とか宗教とか、興味ないからなぁ」
葉は立ち上がってズボンについた汚れをはたいたら、丘の先まで歩いた。
歩いた先には東京の街が広がる。鉄で出来た息苦しい街並みだが、今ではそこに暮らす人々の意識はその息苦しさを諦め、終いには慣れすら覚えてきてしまった。
「ねぇ、葉くんはどうして東京に来たの?」
歩き出した葉の後ろ姿を見ながら優梨は疑問を投げかけた。
「仲間を集めに来たんだ」
「「仲間?」」
質問の答えに、まん太と優梨は声を揃えた。
「シャーマンの核は、そのほとんどが自分に協力してくれる霊の強さによって決まるんだ。
つまり、強い霊を身につける事によって一人前のシャーマンとして、認められる事になる。
――この広い東京なら、きっと最高の仲間と出会えるはずだ」
普段はのんきでユルくてのんびり屋な葉だが、具体的な目的を話す今だけはかなり格好がついてる事にまん太は少し驚いていた。
(うわぁ…なんか凄いな、ボンヤリしてる様で、実は葉君ってしっかりしたビジョンを…)
「と、ゆーわけで、仲間になってよ阿弥陀丸!」
「「って凄いお手軽――!?」」
あまりにもフレンドリー過ぎる葉の対応に二人は同時に突っ込んだ。
話を持ち掛けられた阿弥陀丸もポカンとした顔で固まっている。
『…拙者に仲間になれと?』
「いやぁ、このあいだの剣術は凄かったからさぁ!お前なら持霊として…」
『断る』
「え?」
葉の言葉を遮って、阿弥陀丸は座っていた腰をあげた。
『この間は、偶然拙者とお主の意思が一致しただけの事…それ無くしてお主に協力する筋合いなど無い。
そもそも拙者は、ここを離れるつもりは毛頭無いのでな…』
それだけ言い残し、阿弥陀丸は姿を消してしまった。
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