星にいのりをーReleaseー
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すべての始まりの日。
その日は、ただの日常の一端に過ぎないはずだったのだ。
小山田まん太は塾を終わらせ、友人とも別れて家に帰る途中だった。いつもと変わらない。家に帰ったら自分のサイズには豪勢過ぎる部屋で勉強し、これまた自分のサイズには豪勢なベッドで眠る。
だが、彼は気が付くと丘のある墓地の前に立っていた。まるで誰かが自分を呼んでいるかの様に。
「…なーんつって!たまには違う道で帰るのもいいよなぁ!ここ抜けた方が近かったりするし…」
「星が綺麗だなぁ」
まん太が真面目な前説をぶちこわす様なセリフを言っている。リアリストな自分に似合わない想像を笑い事で済ませていると、知らない少年の声が突然まん太の独り言を遮った。まん太はその声に言われた通り夜空を見上げてみる。
確かに声の言う通り、東京では滅多にお目にかかれない位の綺麗な星が瞬いていた。無数に輝く星の煌めきには、まん太も思わず歓喜の声をあげた。
「うわぁ〜、ほんとだぁ……
って誰!?」
先の丘を見ると、そこに座り込んでいた少年が立ち上がり、まん太に声を掛けた。
「お前も、星を見に来たんだろ?こっちに来いよ。みんなで見ようぜ」
少年の誘いにまん太は戸惑いを隠せない。それはそうだ。声を掛けた少年がいくら自分と同じ年代でも、いきなり夜中の墓地で声を掛けられてその誘いに素直に応じる人なんて今時いない。怪しさ満点だ。
「い…いいよ…もう遅いし…それに君、文法間違ってない?二人じゃ『みんな』とは言わないよ…」
「いいや、『みんな』さ」
「は?」
「この墓場のな!」
「!?」
少年がそう言った途端、彼の後ろにたくさん半透明の幽霊が現れた。ところどころに火の玉が浮いていたり、幽霊には無論地に足などついていない。あぁ、幽霊は空中を滑るように移動するという話は本当だったのか。
「いっひひひ!」
少年は悪びれた様子も無くヤクザみたいな幽霊と気心の知れた友達のように肩を組んでいた。何でそんな仲良いんだ、と突っ込む気力も無くまん太は段々と顔を真っ青にさせていく。
「…っぎゃああああああ!!!」
これが、すべてのはじまりだった。
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