星にいのりを-Revolution-
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≡森羅学園中等部 1年C組≡
優梨が妙な夢を見た朝、教室では授業も始まっていないというのにまん太が大騒ぎしていた。
「本当なんだってば!!いつものあの墓の丘に、中国の武将の霊と一緒に少年がいたんだよ!!
ありゃ間違いない!シャーマンだよ!!君の他にもシャーマンがいるんだ!!」
教室に入った途端にはっきり耳に届いたあからさまなシャーマン絡みの話に、優梨は思わず背筋を伸ばしてしまった。
「、どうしたの?」
「あ!優梨ちゃん聞いてよ!!昨日あの墓で…」
「落ち着いて!霊とかシャーマンとかあんまり大声でしゃべっちゃダメだよ」
「あ……」
まん太はふと我に帰って口を塞いだ。
幼い頃から霊的能力が高い優梨は不用意な会話から奇異の目で見られる恐ろしさを知っているため、注意を怠らない。まだ霊が見えて日も浅い自分にはこういう時の癖や優梨が受けてきたような差別の経験がほとんど足りないのだ。
「ご…ごめんね…」
「ううん、誰も聞いてなかったみたいだし…それより今の話どういうこと?」
「あ!そうそう!昨日、塾の帰り阿弥陀丸の首塚があった丘で、僕が霊が見える人間だって言い当てたヤツがいたんだ!そいつが阿弥陀丸を頂くとかなんとか言ってて、感じ悪いんだよ!」
「え!?」
耳を疑った。
「ちょっと葉くん、それ大変なんじゃ…!?」
「へえ…そりゃすごいや」
しかし本人は何処に吹く風。
既に自分の机に突っ伏して寝る体制を決め込んでいた。当然二人はその反応にええーっ!?と声を揃えておどろく。
「葉君、おどろかないの!?」
「何だようるせえなあ…誰もシャーマンはオイラだけなんて言ってないだろ…シャーマンは今でも世界中にたくさんいるって」
葉はモゴモゴと寝ぼけた声で返した。だがまん太が伝えたかったのはそんな至極当たり前のことではないのだ。まん太は勢いよく葉の耳を引っ張り、大音量で叫ぶ。
「だから!!そいつが君の阿弥陀丸を頂くって!!それは大変なことではないのか!?」
耳にキーンと残る残響音を感じながら、葉はようやく事の重大さを把握した。
「……阿弥陀丸を?」
***
とにかく話は今日の授業が終わって落ち着いてから、ということで三人は放課後に学生の寄り道の定番ファーストフード、マッドナルト(ふんばりヶ丘支店)でまん太の話を聞くことにした。
年頃男子の葉とまん太はガッツリとセットを注文していたが、優梨はポテトと飲み物しか頼んでいない。
まん太の話によれば、年は自分たちとほとんど変わらないそうだが鋭い目付きや有無を言わさぬ口調、よく分からないが非常にトンガっているなどの特徴が挙げられるらしい。
御丁寧に名前まで名乗って行ったらしく、その少年は『蓮』というそうだ。
「蓮…レン……」
葉は飲み物のストローをズルズル啜りながら少年の名前に心当たりがないか考えている。
「…やっぱ知らんわ、そんなシャーマン聞いたことない」
「本当!?でも何かあるんじゃないの?どっかで恨みをかったとかさ」
まん太が怪しい目で葉を見るが、葉は本当に心当たりはないようで少し困った顔をしている。
「そうかな?葉くんが恨みかうなんて、私信じられないよ」
優梨はポロッと口走ったが、それに葉は目を丸くしていた。
「…どうしたの?」
「あ…ううん、ありがとうな、優梨」
「?」
首を傾げる優梨をよそに葉は嬉しそうに笑った。心なしか緩めた頬が色付いている。自分は何か彼を喜ばせるようなことを言っただろうか。
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