星にいのりを-Revolution-
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≡駄菓子の駄パンポ店内≡
「あー驚いた…まさか位牌に霊が入ってるなんて」
「まー位牌とかお墓は霊にとって家みたいなもんだからな」
「それより位牌を持ち歩くことの方が私はびっくりだよ…無くてもついてきてくれるんじゃない?」
落ち着いてきた頃にまん太はアイスクリーム、葉はメロンのかき氷、優梨はいちごのかき氷を食べ始めた。
テーブルに置かれた阿弥陀丸が入っていた位牌の前には先ほどスプーンを立てた葉と同じメロンのかき氷が置いてある。
霊が見えない人間にはなかなかシュールな光景だろう。
「だってこいつ首塚壊されちまったからさ、いつもフワフワしてたんじゃ疲れちゃうもんな」
「え?そうなの?」
阿弥陀丸の首塚といえば西岸寺墓場の丘の上に建っていることでふんばりヶ丘では有名である。最近あの辺りは通っていないので優梨は初耳だ。
「…そういえば優梨ちゃんは、まだいなかったんだよね」
まん太がぽつりと呟く。
最近は当たり前のように三人(+α)で行動を共にしていたからすっかり忘れていた。
『位牌なら携帯できる故、いつでも葉殿の側にいられてとても便利でござる』
阿弥陀丸が言った内容に、まん太は眉をしかめながらアイスクリームを舐めた。
「いつも側に?霊と四六時中一緒の生活なんて未だに考えられないよ」
「何言ってんだ、いいことばっかだぞ」
「んん…?例えば?」
とても想像できなくて、優梨は首をひねって聞き返してしまった。
「うん、朝は必ず金縛りで起こしてくれるし」
「「金縛り!?」」
「道に迷った時も上空からナビゲーションしてくれるし」
「ま…まあ幽霊だからね」
「チンピラにからまれたってちっとも怖くないし」
「ま…まあサムライならチンピラより強いわよね」
「その上夜トイレに行くのが怖い時もちゃんとついて来てくれるからな」
「「ていうか阿弥陀丸さん(こいつ)が幽霊じゃない(か)!!」」
普通、夜トイレに行くのが怖いという心理は幽霊とか得体の知れないものが飛び出してくるかもしれない、という気持ちから来るものじゃないのか。まん太と優梨は思いがけず同時にツッコミをいれてしまった。
それでも葉は、何時ものようにニコリと笑う。そして嬉しそうに言うのだ。
「とにかく阿弥陀丸はオイラにとって最高の、ボディーガードなんだよ」
「……?」
そう言った葉の笑顔に、優梨は僅かな引っ掛かりを感じた。
『ぼでぃーがーど?』
「用心棒のことだよ」
『おお!用心棒でござるか!用心棒といえば、サムライなら誰もが憧れる存在でござるよ!』
「そっかぁ、そりゃよかったな」
阿弥陀丸が子供のように顔を輝かせ、葉が温かい笑顔で応える。それはまん太の目に『人間』と『幽霊』という隔絶された関係よりも信頼関係で結ばれた『友人』に見えた。
自分にはいただろうか。いつでも自分を助けたり、守ったり、味方してくれる存在が。そこまで心を開ける友人がいただろうか。
(なんだか…羨ましいな)
葉と関わり始めた頃に、自分の言ったことを信じてくれなかった友人達を思い出したまん太がそう考え至るのも、無理はない。
「…………」
「…優梨?どうした?」
「え?」
じっと葉を見ていた優梨はやっと気付いたようだった。当然周りは不振がる。
「なんかぼんやりしてたけど大丈夫?」
「オイラ変な顔だったか?」
『それとも身体の具合でも悪いのでは…?』
「ち、違うの!大丈夫だよ!」
三者三様に心配されてはさすがにいたたまれなくなり、優梨は慌てて否定した。
「…ただ、なんか……」
「…?」
優梨が葉をまっすぐ見つめながら口を開きかけた時。
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