星にいのりを-Revolution-
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≡不良な男子生徒≡
優梨とまん太はいきなり出てきた怒鳴り声に飛び起きた。葉もさすがにびっくりしたようで、動かしていた腕を妙な位置で止めてしまっている。
「ぼ…ぼくが何したっていうの…!」
「うるせぇデブ!!もう一発ぶん殴られてぇのか!!」
怒声のした方を見ると、金の髪を逆立てた大柄な男子が汗だくで太った男子生徒を殴ったようだ。見た目暑苦しいからといって暴力を奮うとはなんという理不尽。
「け…ケンカかな?」
「なんだ?まん太」
「ああ、また彼荒れちゃってるよ…」
葉は興味津々とばかりに不良男子を見る反面、優梨は間近で繰り広げられるケンカにハラハラしていると、まん太が不良男子を知っているような口調で見ていた。
「知ってんのか?」
「知ってるも何も…ふたりともグッシー健二って知ってる?」
優梨と葉は少し顔を見合わせた。
「「……知ら(ん)(ない)」」
「だよね。
グッシー健二っていえばアフロヘアーと独特のファイティングポーズが売りの、日本のボクシング界の神様って言われてた偉大なチャンピオンでね…
で、彼はそのグッシー健二に才能を見込まれた有望なボクサーだったんだよ」
やけに詳しいまん太の説明は何故かいちいち過去形だ。それに葉は疑問符を浮かべた。
「だった?」
「グッシー健二の事故死で彼のジムがつぶれちゃったんだ」
「え…亡くなってるの?」
「そうそう、元々とんでもない不良だった彼をボクシングに向かわせたのがグッシーだったのにその事故だろ!?おかげであーやってまた不良に逆戻り……結局不良は何したって不良だったってことだね」
まん太はやれやれと言わんばかりに不良男子を呆れた目で見ている。優梨はなんとなく、そんなまん太に居心地の悪さを感じてしまった。好きな友達が関わったことのない人とはいえ、悪口を言っているのはどことなく嫌な気分だ。
「で、あの人名前は?」
何とか居心地悪さを振り払おうとして優梨はとりあえず不良男子の名前を尋ねた。
「あぁ、森羅学園3年の飛内達史。
とにかく、あーゆう危険な奴には関わんないのが一番だよ」
「不良だから?」
「そうそう」
「ん――ボクシングチャンピオンの霊かぁ……自分の持霊にしたら役に立ちそうだな―――」
「まーねー…………………………………………………………………………………え?」
優梨の質問の受け答えをしていたまん太が葉の言葉を理解した頃には既に時遅し。
葉は不良男子もとい飛内に無謀にも楽天的に話し掛けていた。
「というわけであんたに聞きたいことがあるんだ!」
「ってあのバカ――――!!
あいつチャンピオンのことしか聞いてなかったのか!?殺されるぞ!!」
「ま、まままん太くんそんなあぁ大げさだよ…!アハハ…」
「優梨ちゃんフォローになってないよ!そんな不安をモロに出したような顔されても困るよ!!」
「ああ?なんだオメェ」
当然元々機嫌が下り坂だった飛内にとっては暢気に話し掛ける葉の存在は不愉快極まりない。
「あんたの死んだ師匠に興味があるんだ!オイラにバシッと教えてくれないか!?」
直後、葉を襲ったのはご丁寧にバシッという効果音が付いたパンチ一発。
「師匠だと?二度とあのクソヤローの名を出すんじゃねェ!!ムナクソ悪いぜ」
すっかり伸びてしまった葉にそう言い捨てると、飛内はその場から大股で立ち去っていく。残ったのは無計画で暢気過ぎる友人を止められなかったまん太と優梨、そして人の話を全く聞こうとしなかった葉だった。
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