星にいのりを-Revolution-

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≡森羅学園敷地内≡


本日快晴。
もうすぐ七月なので暑さは日に日に厳しくなっていくばかりだ。


「あつい…」

優梨も例外なく太陽の熱気にあてられていた。彼女は熱を集めやすい黒くて長い髪なので尚更だ。

「いや暑いよ!!なんだって優梨ちゃんは髪結ぶだけに留めてるの!?扇ごうよ!!教科書貸すからさ!!」

「いや、教科書なら私も持ってるからね…まん太くん」

隣には最近ただのクラスメイトから友達に昇格した小山田まん太。
彼は汗だくになりながら必死で教科書とノートをうちわ代わりに風を送っている。

「それにしても……」

優梨はちらりと木陰の外に目を向けた。


「麻倉くんてば何してるの?」

木陰の外にはまん太と共にできたもう一人の友達である麻倉葉。自分が悪霊に憑かれて学校を欠席している間に転校してきたそうだ。しかも隣の席。

彼はさっきから暑い日向で不可思議な動きを繰り返している。何事だろうか。

「そうだよ…!なんでアイツはあんな元気なんだ!?こわれちゃったのか…」

「違うぞまん太!オイラはあつさと戦っているのだ!」

理解不能だ。

「あつさから逃げるから苦しくなる……だからこうしてあつさに立ち向かえば、楽しく生きられるのだ!」

しかし、精神論で立ち向かったところで現実問題暑さが凌げる訳がないので日陰にいるまん太と優梨よりも葉の方が汗だくだ。

「だめだこりゃ…葉君あつさで本格的にこわれちゃったよ」

「うーん…一人カバディかと思った…」

「いやそれはないよ!どんだけ寂しい人だよ!?」



優梨と関わるようになった二人の中で、まん太はともかく葉は周囲から一歩も二歩もズレた少年だった。

使い古しのヘッドホンに魔除けと勘違いしそうな首に掛かった熊の爪のアクセサリー、しかも登校はいつもローファーではなく便所サンダルという体たらく。
いくら森羅学園が自由な校風だと言ってもこれほどまで型破りな生徒は見たことがない。
でも、優梨には彼と一緒に居たい理由があった。


「…ねぇまん太くん。シャーマンについて、もう一度教えて?」

「うん、いいよ。このページだからね」

「ありがとう」

優梨に渡されたのは『万辞苑』と書かれた分厚い辞書。
頭脳明晰博覧強記で知られる民芸学者である万田院光著のその一冊はまん太の愛読書らしい。

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シャーマン【shaman】

自らをトランス状態(忘我・恍惚)に導き、神・精霊・死者の霊などと直接交流する者

シャーマンはそれらの力を借りることで病気の治療や政治・死者の言葉をこの世に伝える『口寄せ』などを行う宗教的能力者

彼らは古代においては人間社会の中心であり、現代においてもなお世界中に存在している


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二人は優梨とおなじように霊を視ることのできる能力者であり、特に葉は霊の力をこの世で行使する『シャーマン』なのだという。

優梨は今までシャーマンどころか霊を視ることができる人間にも会ったことがなかったので(まん太にシャーマンの存在を知らなかったと言ったら驚かれた)葉とまん太の存在はかなり大きかった。
優梨はうーん、と考え込む。


「でも麻倉くんってよくわからない…」

「え?」

「悪い人じゃないのはわかるんだけど、私を助けてくれた時はしっかりした表情だったのに普段あんなにボンヤリしてるから、どっちが本当の麻倉くんなのかなって…」

全く関係ないのに真剣に悪霊となったまどかに取り憑かれた自分と向き合ってくれた葉とめんどくさがりでダラダラした面が悪目立ちしている葉。
一体どちらが自分が信じてもいい『麻倉 葉』という少年なのか分からないのだ。


「…まぁ、だからってキビキビしてて暑苦しい葉君ってのも……」

「テメェ暑苦しいんだよ!!」

「「えっ!?」」



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