星にいのりを-Revolution-
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≡東京 ふんばりヶ丘≡
「ほんっとに君はユルイ奴だな!!」
まん太に腕を掴まれて葉は強制的に引き摺られる形になっている。だが、本人は引っ張られてガタガタ揺れているにも関わらず寝ぼけた目でたまにムニャムニャ言っているのだから凄い。
「なんだよ まん太…まだ眠たいのに怒鳴るなよー」
「待ち合わせしたのに君が遅刻するからだろっ!
今日は朝から剣道の試験があるってのに!!受けらんなかったらどうする気だ!」
「家帰って寝るよ…なんか今日はいやな予感がするんだよな」
「バカ言うなっ!」
シャーマンを自称する麻倉葉という少年に出会って、約一週間。それまで平凡な日常を過ごしていた小山田まん太の生活は普通よりやや特殊なものになっていた。
自分が見える世界に幽霊が追加されたのも要因だが、何よりこの少年、全体的にユルイのだ。
文武両道を掲げる我が校に来たかと思えば授業中は居眠りばかりでノートもとらない。
体育なんかは更にやる気がなく、サボって音楽を聴いていたのを目撃した。
サンダル登校、頭に被ったヘッドホン、ワイシャツは前を全開にして熊の爪の首飾り。因みにアクセサリーは校則違反。
そんな見た目も他より一歩ズレた転校生に近付く物好きなんて居らず、まん太は葉の世話をはからずも押し付けられた事になる。別に葉の傍に居られることに悪い気はしないし、何より友達なのだから嬉しいことだが如何せん疲れる。
「もぅ…こんなんじゃ僕体力持つかなぁ……」
せめてもっと葉に友達と呼べる人がいれば、この気苦労も半減するんじゃないか、と心の中で思い始めた時。
「…ん?」
近くのゴミ捨て場に箱詰めで置いてあった酒瓶の山がガチャガチャと音を鳴らして揺れたかと思えば、それらが葉とまん太目がけて倒れこんできた。
「うわあぁぁ!!」
酒瓶は派手な音を鳴らしながら割れ、破片があちらこちらに散らばる。
瓶が割れる音に驚いた子供や僅かに身体を怪我した人が喚く中で葉が酒瓶が入っていた箱のひとつに首を飲み込まれている。
「まん太!?急に真っ暗になっちまったぞ!!」
「箱を取れ―――!!!」
呑気なものである。
電信柱の陰から、少女が二人を覗いていた事も知らずに。
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