舞遊

□雨とパンプキンパイ
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帰り道の

小さな狭い住宅路。


いつもより

心なしか薄暗くて

肌寒く感じるのは

冬のせいもあるけれど

生憎の雨というのも

関係するだろう…。


人とは

不思議な生き物で

天気に惹かれ合うように

感情の色を変える。


いつも以上に

感傷度が

若干高いのは

きっとそれだろう。


そういう時は

やけに雨臭さが気になるようで

足並みが

早まる。


ふと、

視界に映った店の灯り

中に入りたくなるのも

心理的に

当然で。


この辺では

知る人ぞ知る

人気のパン屋。


使い古しの

言わばお古の傘閉じて

誘われるように

店内に歩み寄る。


迷うことなく

一番人気の

パンプキンパイ一つ

導かれるように

手を取って

お金を払う。


再び傘を片手に

出た路地。


先程より

少し心が軽やかなのは

有り難いと

確かにこの身に感じ取りながら

家路を急ぐ。


こんな日は余計なことを考えるようで…

しかし余計なことは

やはり余計で。


考えれば考えるほど

ぶり返すのは

予測が出来るので

帰ったら珈琲と一緒に

パンプキンパイをいただこうと

ただひたすらそれだけを

頭に繰り返し詰め込める。


珈琲の苦味と

パンプキンパイの甘さは

相性が良さそうだと

雨臭さ振り払うように

甘い香りに

気持ちだけ浸す…。


家路の終点

いわゆる

自宅に着いたなら
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