からすあげはの散歩道
□烏揚羽
1ページ/1ページ
[烏揚羽]
少年の頃.
夢の中まで追い続けた烏揚羽が人通りの多いスーパーの通路で死んでいた
あまりにも綺麗すぎる死に様に僕はその場から動けなかった
衝動を抑えることをせずに僕は屍を掌にのせた
動かなくなった少年の頃の憧れ
烏揚羽が今
僕の掌の上にいる
何かの間違いで紛れ込んで そのまま力尽きたのだろう
いや、眠っているのかもしれない
羽の先まで綺麗な烏揚羽が僕の掌の上にいる
僕は記憶を繋ぎ止めたくて屍をコピー機にのせた
何枚も何枚も何枚も何枚も…
僕は複写した
再び掌にそっと
渇きはじめた烏揚羽をのせ外へ飛び出した
いつもの青空はいつもより青く そこには見たことのない螺旋を描く雲の群れが浮かんでいた
そっと雑草に屍を絡めて 僕は部屋へと戻った
やはり 追い続けた青空に舞う烏揚羽がいいと素直に思った
冷たいテーブルの上には 今にも飛んでいきそうな烏揚羽の面影が乱雑にひろがっていた
きっと僕の心の中で高く飛び続けるのだろう
もう戻れない少年の頃のように…
憧れのままで