日だまりの唄〜ポメラニアン物語

□日だまりの唄〜ポメラニアン物語
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結構前のことなのであやふやなのだけれど…

僕がこの家にやってきたのは  たしかよく晴れた日の午後でした

なんでも先にこの家に仲間いりした柴犬が 一人では寂しいだろうということで

僕に白羽の矢がたったらしい
なぜ柴犬ではなくキュートな僕なのかは謎なんだが

思い出せば あの日僕は朝からテンションが高く顔が痒いのも手伝って小さな囲いの中で大暴れしていた

するとそこに今の相棒…いや先生?
う〜ん…と・とにかく信頼できる母というヒトが突然現れて僕のこの美貌に一目惚れしたらしい

しばらくご飯を食べさせてくれていたエプロンのヒトに抱えられて登場する気取った僕に優しい眼をくれたんだ…

僕はこのヒトを待ってたんだ
その時直感したね
最大級の礼儀をはらってご挨拶するやいなやいきなり小さな箱に入れられて…次に光を浴びたときには大きく運命は動いていた

ゆらゆらと不規則に揺れる乗り物に乗って気持ち悪くなりながらいろんなことを考えてた

気持ちの悪いのがピークに達するころ見たことのない場所に着き今でいう母が箱から僕を解放してくれた
するとすでに家族?となっている のちに1番の理解者となる柴犬がそばに来て

「どこから来た?なんていうんだ?仲間なのか?」と質問を投げ掛けてきた

結局 僕の答えを聞くわけでもなく「なかなか居心地いいよ
よろしくな」と優しく受け入れてくれた

大冒険に疲れた僕は歓迎のなか眠りに堕ちていった優しい日だまりの唄を聴きながら…

それでも…こんな僕にもいくばくかの葛藤があった

僕はこれからどうなるんだろう…
これからどうすればいいんだろう…
夜な夜な離れ離れになった母を思い出しては泣いたこともあったっけ

でもそんな僕を優しく抱きしめてくれる母というヒトはすべてを許してくれた

僕の身体が大きなトラブルに見舞われて大手術を受けたとき
迷医に雑巾縫いよろしくザクザクに身体を縫われてふるえている僕を寝ないでずっとそばで元気付けてくれていたんだ

幾分痛みは残るものの虚ろな意識のなかで

この母のために生きようと自らの運命の扉を開いた
決めてしまうと日毎に母が大好きになり
目覚めて母に逢うだけでドウシヨウモナク元気になれた

叱られながら覚えたトイレや待つこと…楽しみながら覚えた散歩やご飯どう?賢くなったでしょ?

ねぇ母?
今でもみんなで行った公園や海や山 全部覚えてるんだ

母たちよりはやく年をとるぶん 愛し愛される密度を神様は僕に詰め込んでくれるんだ
足の裏を刺激した砂や芝生さえ覚えてるんだよ

今 僕はこの家の犬族の真ん中にいて弟分をキビシク躾しながら毎日を過ごしています

近頃 弟分に母を奪われがちですが僕が柴犬のアニキにそうしてもらえたように僕も弟分に母の愛をわけてあげています

寂しいときは母の匂いのするフトンで我慢しながらね…

僕はひとりのポメラニアン
いくら頑張ってみても母と同じ長さの時間を楽しむことは許されません
千の言葉を覚えても許されない願いなんです

だから毎日元気です
だから毎日元気なんです

朝いく公園も夜いく道も僕の足跡は残らないけど
母の歩いた人生とポメの歩いた犬生にはたしかに重なった愛しき日々が刻まれるのでしょう
感情が無ければ悲しみもないのにって感情を持って生まれたことをうらんでしまうこともあるけど…

でも
それでも
大きな大きな喜びが知らない間にそんな気持ちを消し去ってくれます

命がすばらしいのじゃなくて生きるのがすばらしいと教えてもくれます
僕は小さなポメラニアン
ヒトほど大きくないけれどマケナイ愛をもってます
今日をグルリと見渡してたくさんの好きを見つけます
母の膝に身をまかせ無限の好きに揺られます
日だまりの唄を聴きながら…


日だまりの唄を聴きながら

《想いの果てに》


この広大な世界で最高のパートナーと
出会えた私たちは

最高の幸せを知る
幸福なヒトたちかもしれない…

ほんの少しの…

だとすれば

君たちとともに歩く道は

どんな銀河よりも
輝いているのでしょう

夕日に向かいいのりましょう

私たちと
ともに君たちの幸せ


永遠であれ…


   

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