PROTRUDE

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情事後。気だるい体をベッドへと倒し、あたしと同じように隣に身を倒した修兵の胸に顔を埋める。


「…修兵…」

「…何だよ」


ボソッと修兵の名前を呟けば、修兵は怪訝そうにそう答えた。


「今日は大丈夫なの?お母さんとか…」

「今日は保護者会みてえなのがあるっつってたからな。多分飲み会で遅くなる」

「そっか」


修兵の多分はほとんど絶対。だからその言葉に安心して、あたしはゆっくりと瞼を下ろす。案の定、すぐに睡魔が襲ってきて、意識はゆっくりと遠退いていった。






「……ん…」


ゆっくりと重い瞼を開ければ、すでに部屋は真っ暗になっていた。もう夜か。


「起きたか」


その声に上体を起こすと、同時に電気のスイッチを押されて明かりの眩しさに目を細める。あたしが見上げた先には、すでに服を着た修兵の姿があった。目が合うと同時、あたしの制服を顔に投げつけられる。


「わっ…」

「服着ろ。そろそろ帰んねえとヤベェだろ」

「今何時?」

「九時」

「え、マジで」


今現在の時間が自分が思ってたよりも遅くなっていることに驚いて、急いで投げつけられた服を着ていく。


「あー…雨降ってる」

「送ってやるよ」


不意に煙草の匂いが鼻をかすめた。修兵の手を見れば、今吸い始めたばかりであろう煙草が握られている。


「ちょ、窓開けてよ。匂い移る」

「へーへー」


雨が降っているが仕方がない。煙草の匂いなんて、親に気づかれたら後々面倒だ。あたしがそう思っていることを知っている修兵は、渋々ながらも窓を開けてくれた。


「あのさー」

「あん?」

「この街って、生きてく上で必要なものって全部揃ってるじゃない?」

「まあ、あそこの坂越えちまえば大抵の店は揃ってるな」

「そう。あたしは上京しようとか、そんなこと考えてないから、この街から一歩も出ないまま、死んでいくのかなーなんて」

「…何だよいきなり」

「…んー、やっぱいいや」


変なヤツ、と再び煙草を吸い始めた修兵を一瞥し、雨の降る空へと目を向ける。


(…つまんないんだよ、)


修兵と初めて身体を交えた時、あたしは自分の中での何らかの変化を感じた。今にはない気持ちの高ぶりが、あの時にはあった。修兵には悟られているか分からないけど、あたしはあの四人と一緒にいると、どうしようもなく苛々することがある。四人の優しさに触れると、尚更。その原因は、あたしには分からなくて。今がつまらなくて、時々また、海に飛び込んでみようかと思ってしまう。




『自殺すんなよ』




いつしか、何の脈絡もなく修兵に言われた台詞が頭を過る。修兵曰く、あたしは自殺願望がありそうな雰囲気を纏っているらしい。あたしの何がそんな風に見えるのか、全く見当がつかない。


「…ねえ、修兵」

「今度は何…」

「いなくならないでね」


その台詞に目を丸くする修兵。久しぶりに驚いた顔を見た。


「…こっちの台詞だ」


そう言って抱き締められる。強く、強く。折れてしまうのではないかと思うぐらいに強い力で抱き締められて、否応なしに呼吸が苦しくなる。


くるしい、くるしいよ修兵、









はあんなに広いのに





 

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