小説
□ある日の朝*
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今日は少し、肌寒い。
まだ日も昇らぬ朝の町は、人気が全くなく、霞が少しかかっている。
いつもより30分も早く起き、洗面所に向かう。
歯を磨いて、顔を洗って…いつもより入念に。
朝ご飯は大好きなコロッケ。そして隣りのイスにはちょこんと、小さい相棒が。
2人で朝ご飯を食べ、鏡の前へ
「なぁ、これどう思う?」
鏡の前で、何度も何度も確認する。
相棒は、いつもは自信たっぷりの主人の豹変ぶりに少し戸惑うが、ちっちゃな手を突き出して、
ピッピカチュウ!!
その反応を見て、少し落ち着く主人。
今度は慌ただしく洗面所に向かっていく。
それを眺める小さな相棒は、やれやれと肩をすくめる。
知らないうちに日は昇り、いつの間にか霞も晴れていた。
歯を磨き終えたのか、主人はドタバタとまた鏡の前へ。
イスの背にかかっていた、トレードマークの帽子をかぶり、最終確認。
そして、くるっと後ろを振り向いてしゃがみ、相棒と同じ目線に。
「ごめんな、今日はお前を連れて行けないんだ」
目の前で手を合わせる主人に、笑顔を向ける相棒。
すると、時計を見た主人は、慌てた様子でドアに向かう。
「じゃあ行ってくるな!ごめん!留守番頼んだぜっ!」
ピカピカピカチュウ!
「ははっわかった、カスミによろしく言っとくぜ!」
そう言いながら、笑顔で出て行く主人を見て、元気をもらう、小さな小さな、相棒だった。
end