アオイシロ

□She is CAT?
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久しぶりの予定のない休日に、何となく人肌恋しさを感じ、それこそ何となく汀に電話を掛けた。
私にとって汀は不思議な存在。
家族や友人と居る時とは少し違う、不思議な存在。
そんな彼女は鬼切りの仕事で忙しいし、沖縄に住んでいて超の付くほどの遠距離。
全国大会で再会した汀と時々連絡は取り合うけれど、それだけの関係。
しばらく続いた呼び出し音に、僅かに諦めかけていると、突然呼び出し音が切れた。
そして聞こえてきたのは、いつもの汀の声ではなく、もっと低い男性の声。
間違えて掛けてしまったのかと慌てて番号を確認したけれど、見慣れた汀の番号が目に入った。

「小山内さんですよね?」
「え?あ、はい……どなたですか?」
「あぁ、すみません。守天の者です。何と言うか、汀の上司です」

普段汀が若と呼んでいる人だろうか。

それにしても、どうして汀の電話に上司が出るのだろうか。

「ちょうど今小山内さんに電話をしようとしていた処なんですよ」
汀の身に何か起きたのではないか…
ふとそんな不安が脳裏をよぎった。
「あの……汀に何かあったんですか?」
「え!?あぁ…いや……汀の奴はある意味元気なんですが…実は小山内さんにお願いがありまして……」
多少“ある意味”という言葉が引っ掛かりはしたけれど、それよりも守天の鬼切り役直々にお願いとは何事だろうか?
「実は小山内さんにしばらく預かって欲しいモノがあるんです」
「預かって欲しい物…ですか?」
「ええ、しばらくの間だけでいいんです。とにかく今そっちに向かってますから」
「……え、“向かってる”って……え??」
どういう事なのかと確認をしようとした途端、玄関の呼び鈴が鳴った。
まさかと思いつつ玄関のドアを開けると、そこにはかなり大柄の男性が立っていた。
キャリーケースを抱えたその男性は汀が以前持っていたプリクラに映っていた人だった。

「いろいろ話さなければならない事もありますが、詳しい事は汀の奴と連絡が付いたら訊いて下さい。とりあえず、コレ、預かって下さいね。じゃあ」

「え!?ちょ……ちょっと!!」

「んじゃ、よろしくお願いしますね!」

「えぇぇええ!?…………何よそれ」


拒否する暇を与えぬようにか、汀の上司はあっという間に出て行ってしまった。
汀の他人に迷惑を押し付けるところは、守天党譲りなのかもしれない。



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