novel

□balance
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二人居て、初めて"ルーク"という存在になれる俺達。どちらか一人でも欠けてしまえばそれはもう"ルーク"とは呼べない存在だ。俺だけじゃ、ルークにはなれないんだよ。

なのに…




こんなところで寝てちゃ駄目だろ?
アッシュ…




血濡れのアッシュを抱き抱え、俺は静かに微笑んだ。

ローレライを解放するという最期の大仕事を終え、俺を構成していた音素は次々と彼の身体に流れ込んでいっている。
ジェイドが言っていた通りの、自分の身体から何かが抜け出て行く感覚を味わいながら、次第に透けていく身体を眺めた。

この身体、記憶を留めた音素がアッシュに流れ込むということ。
それは俺という存在がアッシュの中に溶けるということだ。
怖くないのかと言われたらそれはもちろん怖いと思うが、今はそれより幸せだと思う気持ちのほうが強かった。

「アッシュ、俺、お前の中に溶けて、"ルーク"になるんだ。そりゃもちろん怖えと思うけど、お前の中に溶けられるのが嬉しいよ…だって」


これでもう、離れることは二度とないじゃないか






ルークは幸せそうに微笑み、すでに認識出来ないほど透けた手でアッシュの頬に触れると、すうっと溶けて消えていった。
 
 
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