■妄想賛歌
□十字架に誓う。
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ぼんやりと夜空を見上げながら船に揺られてゆく
綺麗な満月が、疲れきった心身に柔く沁みた
任務からの帰路
教団に着くまでの、束の間の休息
自分の過去や名前は忘れてしまったけれど、やっぱりいつ見ても、月は綺麗だ
もう何べんも、そう思わされた
見上げるといつもそこにあって
その絶対的な存在感、包容力で、俺たちをそっと包んでくれる、そんな気がして
何故だか少し、安心できるのだ
あいつは、いつもなーんにも言わずに黙ってこっちを見下ろしている
この星で何が起きたってまるで関係ないといった風で高みの見物
幸せも不幸せも、あいつは全て傍観してきたわけだ
なんて事を考えていたら、気付いたら自分を投影していた
生きざまが、俺と似ているような気がしたんだ
けれどつまらなくはないのだろうか
あんな誰も居ないところにたった一人で居て
ずっと夜の世界を眺めているだけで
誰とも話せないのに
寂しくは、ないのだろうか