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□忍足はぴば!!
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誕生日に何が欲しいと訊ねたら

「景ちゃんが欲しい」

と答えられた。


常に跡部跡部と騒ぐ忍足だ。まあ、予想の範疇内ではあった。

言葉の意味を要約するとすれば、跡部と一緒に過ごす時間が欲しいという事。

予想してようが夢想してようがそれでも、ただただ自分だけを求めてくれるのは素直に嬉しかった。

だから気を許すとすぐに口元が緩んでしまう。



甘いキスの後、忍足に抱き抱えられていた跡部はそのまま流れそうになる雰囲気を防ぐ為、自分に喝を入れた。

日がまだ変わったばかりなのに、こんな時間からアッチの展開に行くようでは駄目なのだ。

今日は忍足の誕生日なのだから、彼を喜ばせる事をたくさんしたい。

もちろん忍足はその方向でも大歓迎なのだろうが、それでは自分が納得できない。

あくまで自分がプレゼント、と忍足自身が望んだとしても、まさかそれだけで終わらせる気等更々ないのだ。

ちょっとした物だってちゃんと用意している。

早くそれを渡したくて。


だから跡部は改めて祝いの言葉を紡いだ。

「ほんとにおめでとう」

「ん、ありがとうさん。ついでにゆーし、って名前も呼んで」

「調子乗んじゃねぇ、バカ!」

「いたた・・・。ちょ、けーちゃん痛いて」


ああ、忍足がまたあほな事言うから渡すタイミングを更に逃してしまった。

じりじりしている跡部とは逆に、今日の忍足は一日中にこにことしている。



そんなに俺といるのが嬉しいのかよ。



でもそういえば・・・と思い返してみると、自分だって誕生日の日に忍足と一緒に過ごす時間が一番幸せだと感じたのだった。


それはもう、寝る時間も惜しいくらいに。
だから忍足がずっと機嫌がいいのは当たり前なのだと、思い直す事にした。






「これ」


手の届く範囲に置いていた鞄の中から小さい箱を取り出して跡部の前に差し出した。

「なんだよ?」

不思議そうな顔をして忍足を見る跡部。

「俺から景ちゃんに」


「はあ?」

跡部の声は信じられない、というものだった。

それはそうだろう。

何故忍足の誕生日に忍足本人から何かを貰わないといけないのだ、跡部がいぶかしむのももっともで。


しかし質問は受け付けるつもりはなかった。

「開けてみて」

忍足の真剣な声に言われるがまま箱を開いた跡部は次の瞬間には涙ぐんでいた。


「景ちゃん」


「お前・・・これなんだよ。今日はお前の誕生日じゃなかったか?」

「うん、だから景ちゃんにあげるねん」

「意味わかんねぇ・・・」


銀色に輝く指輪を左手の薬指にはめられるのを跡部はじっと見つめていた。


「やっぱりシンプルなデザインにしてよかったわ。よう似合っとる」

ほっとして笑みがこぼれた。

対して跡部はいまだ困惑顔だったが。


「それでこれは一体何なんだ」

「だからプレゼントやん」

「俺にしてどうすんだっつの!お前の・・・」

「だーかーらー」


怒りだした跡部の手をぎゅっと握る。


「景ちゃん自身が俺のプレゼント。欲しいて言うたやろ?」


「・・・・・・・・・・・・・・・」

あれ?もしかせんでも俺すべってる?
今きまった!と思ったんやけど。


「な、なあ、なんか言うてよ。それとも、やっぱ安っぽすぎた?俺の精一杯やってんけど・・・」


跡部を喜ばせたくて、そして何より自分自身が本当に跡部を繋ぎ止めていたかったからなのだけれど。



じっと跡部の返事を待った。


やがて。

「・・・違う・・・」

ぽつりと呟いた跡部。


「ん?」

「う、嬉しい・・・と、思う。・・・お前の気持ち」


頬を真っ赤に染め上げたどたどしい口調で答えた跡部を、堪らず忍足はぎゅっと抱きしめた。


「ほんまに?ほんまに景ちゃん俺にくれるん?」


こんな俺の一人よがりな願いをきいてくれるんか?


「やる・・・侑士に」


「・・・ありがとう。俺も景吾のもんやで。景ちゃんの事、一生大事にする」



それは本当の想い。


跡部は微笑んだ。それは綺麗な華のように。

そしてとてもとても嬉しそうに。



「たりめーだ、バーカ。忍足・・・」

跡部からしてくれる優しいキス。

そしてその後、跡部は忍足の耳元で囁いたのだ。



「・・・HAPPY BIRTHEDAY 侑士。愛してる」







君が生まれてきてくれた事が僕の本当のプレゼント。

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