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□抱き枕が欲しい
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「景ちゃん・・・」
いつになく真面目な態度、真剣な眼差しで見つめてくる恋人に、跡部は胸がときめいた。
「どうしたんだよ、いきなり・・・」
漆黒の瞳に吸い込まれそうになり、目を逸らしてしまう跡部。
忍足は困ったような、それでいて媚びるような甘える視線を跡部に投げ掛け、耳元に低く甘い声で囁いた。
「俺な、どうしてもほしいもんがあるねん」
それだけで跡部の腰は砕けてしまう。
元々低音の忍足の声は常に色気を纏っているのにも関わらず、更に意識して発せられるそれは最早犯罪的で。
「な・・・にが欲しいってんだよ」
真っ赤になりながらも両腕で忍足の肩を押し返す。
どきどきが止まらない。
早く静まりやがれ、心臓。
等とぎゅっと目を瞑って左胸を押さえている跡部ににっこりと笑った忍足。
「景ちゃんの抱き枕」
「・・・・・・は?」
跡部は目が点になり茫然となった。
何と言った?こいつは。
「等身大の抱き枕!こっちに微笑みかけてくれたりして、めっさ可愛えのもええし、赤い顔でちょお服がはだけたりしてるんもええな!!」
握りこぶしを作り熱く語り出す忍足に、跡部は急激に上昇していた熱が急速に引いていくのを感じた。
「恥ずかしい顔になんべんも顔射したり、いや、洗濯大変になるか・・・更にオナホ・・・・・・ぶっ・・・!」
「皆まで言わすんじゃねぇ!!こんのド変態!!」
渾身の一撃で忍足を沈めた跡部は床にだらしなく倒れた忍足の腹を踏みつけた。
「ぐへっ・・・!ちょ、けぇちゃん、それは流石にやり過ぎ・・・」
「アーン?てめぇの妄想程じゃねぇだろうが!」
更にぐりぐりと力を込めてくる跡部に相当怒らせたらしいと今更ながらに気づいた忍足は何度も謝罪の言葉を口にする。
「ほんま堪忍!すまんかったっちゅーか・・・マジですみませんでした!」
言い切ったところで腹の上にあった足が退けられた。
お仕置きから漸く解放されてほっと息をつく忍足。
「ったく、二度と話題に出すんじゃねーぞ。それにな・・・」
それに?
「・・・俺様自身が居てやってんだからそーゆーのは俺様を使いやがれ」
耳まで真っ赤にし俯く跡部に忍足は釘付けになった。
まさか、抱き枕に嫉妬しているのだろうか。
もしもそうなら可愛すぎるだろう。
忍足は跡部の顔を上げさせ、無理矢理視線を合わせた。
「それは、俺の願望を景ちゃん自身が叶えてくれるゆう事?」
「と、当然だろ。俺だって・・・」
お前が好きなんだから・・・とは続けられなかった。
熱い唇に言葉はさらわれてしまったから。
数時間後。
シーツを肩まで被った跡部が憎々し気に床にひれ伏した忍足を赤く腫れた目で睨みつけていた。
「お前マジ死ぬか?あ?」
「す、すんません・・・」
床に額を擦りつけ、やはり謝る変態忍足であった。