純情ロマンチカ

□ご馳走したいのに
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「おい、昼飯はどっか外で食うか?」


昨日から春休みの忍チャンは今朝、見事なまでの朝食を作り、俺を仰天させた。

アレは絶対人間が食べれるものでは決してなかったというのに、俺は昨日の忍に言った言葉を早々に自分で否定する訳にもいかず、完食してしまったのである・・・。



皆まで言われなくても分かっている。これではただの痛いバカップルだという事は。

本当に俺は何をやってんだ。いい年したオヤジが息子程に離れたガキにメロメロとは。

しかしただただ一生懸命にぶつかってくるこいつは可愛いばかりで。つってまあ、ここまで忍に言うつもりもないが。

「俺は昼も作ってやってもいいんだけど。試したいレシピもあるし」


それでは俺がもちません・・・。


腰に手を当て尊大に言ってくる忍に心でつっこみ、なんとか外へ連れ出そうと試みる。

「いやいや。いつもいつも忍チンに作らせてばかりじゃ俺も気が引けるし。せっかくの休みだし、外に出るのがいいかと思いまして・・・」

こういう時は目を合わせられない俺だが、忍は気付くだろうか・・・。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

忍は黙って俺をじっと見た。
背中から嫌な汗が少し吹き出してきているのが分かる。

頼む・・・、気付くな。

「そんなに・・・」

忍チンの瞳に悲しげな色が灯る。

しまった、バレたかっ?

「そんなに俺と二人っきりが嫌なのかよっ!?・・・それなら泊めたりすんじゃねぇよ、バカヤロー!!」

拳をぐっと握って声を荒げた忍に俺は驚いた。


「は・・・?」

おい、ちょっと待て。
何故そんな方向になる。

「し、忍チン・・・?」

「分かってんだよ、やっぱ俺がウゼーんだろ?お前の顔に嫌だって書いてあんだよ!だったら正直に言いやがれ、このバカ宮城!!」

涙まで浮かべてまくし立てる忍に唖然とする。

何故こいつはここまで悪い方に考えられるんだか・・・。

「落ち着け、忍・・・。そういう意味で言ったんじゃない。他意はない、本当だ」

息切れまでさせて警戒しきった忍を抱き寄せながら、俺は慎重に最善の言葉を選ぶ。

「ただ・・・そう・・・お前とちょっとデートがしたかっただけで・・・駄目か?」


って、何気に上手い文句だぞ、コレ。

最後を耳のそばで囁くように言えば、実際忍ははっとしたように動きを止め、みるみる顔を赤くする。

「だ・・・駄目って・・・そ、それなら、別に・・・いいけどっ」

声は震える、俯いた顔は耳まで真っ赤、人の服は思いっきり掴んで離さない。
そんなこいつが可愛くないだなんて、ウザいなんて一体どうして思える・・・?

忍を抱く腕に力を込め、俺は自分の頭のメーターが振り切れる音を聞いた気がした。



「・・・宮城・・・?」

弱々しく訊いてくる忍の口を塞いで、昼飯もこいつの作ったものでいいから、なんて思いながらまた甘い時間が過ごしたいなんて。





・・・俺も本当に、ヤキがまわってる。

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