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□happy birthday3
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「なんだか全てが俺達には合わなさ過ぎると思うんだが・・・」

「ま、いいんじゃねぇの。せっかくあいつらが気ぃ遣ってくれたんだからよ。素直に楽しめばいいんじゃねぇかと俺は思うぜ」

「それはそうなんだけどな・・・」

こほん、と咳をしてからフリックはシャツの襟元を少し緩める。やはりこういう、きちんとした服装は苦手だ。

「おいおい、お前こんな所で・・・。誘ってんのかぁ?」

フリックの仕草を見て嬉しそうに言うビクトールはいやらしい手つきでフリックの脇腹を撫で上げた。

「こんな所で何しやがるっ」

すかさずビクトールの足を思い切り踏みつけてやるフリック。

「いてぇって・・・。ちょっとしたお茶目じゃねぇか」

「何がお茶目だ。今すぐオデッサの錆にしてやってもいいんだぞ」

傍らに置いたオデッサをちゃき・・・と鳴らせてちらつかせてみれば、ビクトールも大人しくなった。

「・・・へぇへぇ。ったく、せっかく恋人の俺が誕生日を祝ってやってるってのに。感謝の念は持てねぇのかねぇ」

「誰が恋人だ。ただの腐れ縁だろう」

「いい加減認めろっつの」

「うるさい。少しは黙って俺を気分よくさせて祝ってやろう、って気はないのかよ」

「やってるだろ」

「どこがだ」

等と二人で言い合っていても、いつもの様に誰かからの野次が飛んでくる事はない。何故なら今、二人が居る場所はいつもの酒場ではないからだ。

落ち着いた照明、ゆったりと流れるBGM。カウンターに並んで背の高いスツールに腰掛け、奥には顔も見知らぬ店主。

そう、ここは都市同盟の城ではなく、ロックアックスの城下町にして城から程近い高級バーであった。

煌びやかな衣服を纏う男女や騎士達の姿もちらほら見え、二人で旅していた時等にいつもよく利用していた大衆酒場等ではない。

「ああいう場に行くからにはそれ相応の格好で行っていただかなくては・・・」なんてカミューが言うもんだから、普段滅多にしないような正装までさせられて窮屈な思いをしているフリックだった。

ジャケットは肩が凝って仕方ないのでろくに畳みもしないで横のスツールに乱雑に置いている。これまた皺がどうだの、と後で文句の一つもあの騎士には言われるのだろうが、そんな事今のフリックには知った事ではない。

それはビクトールも同じの様でジャケットは羽織っておらず、既に彼のシャツの胸元は大きく開いていたりする。

出された酒は流石に上手かった。しかし、上品過ぎる、とも思う。自分にはもっと安い酒で十分だからだ。

しかし自分の誕生日に合わせて休みをあの鬼軍師に調整させたリーダーとその姉の事を思うと、今日は大人しく彼らが立ててくれたプラン通りに過ごすのがいいのだ、と自分を納得せざるを得ない。

いつも軍の為に陰日向と奔走する自分達の事を心配してくれて、の彼らの行動なのだから。

「なあ・・・」

「ん?」

「今日、外泊許可ももらってっけど・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

さっきまで馬鹿な事を言っていた癖に、そんな真剣な顔でこちらを見ないでほしいものである。

清潔感漂う真っ白なシャツに身を纏い、髪を櫛づけたビクトールはいつもの野生熊風体とは見違える程だったから。

元々のいい体格と相まって彼がいつもの彼ではない様で。そして少しつけたオーデコロンの香りにもどきり、とさせられる。

フリックは赤面しながら俯いた。

「ああ、そうだったっけか・・・」

「実はもうここ来た時に上の部屋、予約してるんだが・・・」

いつの間に。

流石と言うか何と言うか。

「ああ、そう・・・」

「部屋で飲み直す、か?」

しかも何故そこで控えめな問いかけなのだ。いつもはもっと奪うように自分を攫って行ってしまう癖に。

フリックはそこでビクトールもいつもと違い緊張しているのか、と気づく。

「・・・まあたまにはそんなのもいいか」

「フリック」

少し呆気に取られたような顔をするビクトールに、恥も投げ捨て、フリックは微笑んでみせた。

「せいぜい俺を気分よくさせてみろよ」

目を丸くして驚いたビクトールは鼻をぽりぽりと掻く。

「お前はなんでそういうう事をさらっと言っちまうんだろうなぁ」

こっちが照れちまわぁ、等とぼやきながらカウンターに金を置いた。

フリックは楽しそうにジャケットを掴んだ。

「お前のがうつったんだろ。なんせ長い事腐れた仲やってるからな」

「違いねぇ」

笑顔を交わしてから二人は仲良くその場を後にした。

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