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□仲良き事は美しきかな
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猫ってのは不思議な生き物やなぁ。

てか、何であんなに可愛いんやろなぁ。
別に俺自身は飼ってはいないんやで?でもなぁ、知人っちゅーか、腐れ縁ちゅーか、まぁ知り合いが最近猫と暮らし始めてなぁ。

それからや。

何やこう、道を歩いていても、ついその辺の野良に目が行ったり。
CMとかに出てくるのが気になったり。
つい特集雑誌に目を通したり。
最近だとネットの猫関連サイトまで覗く始末や。色々と投稿写真とか載っていてなぁ、結構これが楽しめるんや。投稿者(飼い主が殆どや)からのコメントもおもろいし、『うんうん、そうやなぁ』って頷く事も多いで?
表情とかも見てると、猫って結構感情豊かやなぁって思う事が多いしな。
今もな、TVのCMを見ていて思ったもんや。

――どう見てもアレ…、嫌がってへんか…?――

某レンタルDVDのCMなんやけど、出演俳優が抱っこしとる猫。
抱き抱えられて、何や凄い嫌そうな、迷惑そうな顔してへん?何ちゅーか『…はよ離さんかい(怒)』って声が聞こえてきそうや。
他人事ながらさっさと降ろして、好きな様にさせてやればええのになぁと思ったぐらいや。無理矢理抱っこされ取るのが気の毒や。


「――くすぐったいっスよ〜v一護サン」
「みゃぁ…にゃ?」


――特になぁ、目の前でこーゆー光景を見せられとると、ホンマそう思うんや。

俺の向かい側のソファでは、その『最近猫と暮らし始めた知人』がゆったりと腰掛けた体制で、腕の中の子猫をそれはもう宝物を扱うように丁寧に撫でておってなぁ。
掌全体を使ってゆっくりと。時折指先で喉元を撫でて。
その度に子猫は――ホンマ気持ち良いんやろなぁ――蜂蜜色の瞳を細めて、自分を抱っこしとる相手の為すがままや。

「みぃ…」
「――はいはい、次は『ぎゅう』が良いんスねーv…でも、ちょっと待って下さいね…?」

それから今度は子猫の躯を持ち上げて、そのピンク色の鼻先に軽いキスを贈り始めてなぁ。
子猫もお返しとばかりに、その可愛い可愛いピンクの肉球で相手の頬に触れて、それから小さな舌でぺろっと舐め始めたんや。
いやはや、この場面を撮って猫雑誌に投稿したら、『即採用』間違いなしやなぁ、うん。けどな。


「――…どんだけラブラブやん…」


先刻から俺の事アウトオブ眼中やん。
そりゃあ陣中見舞い称して押しかけたんは俺の方やけど、お茶を出した後は放置プレイってのは酷うないか?久しぶりの休みや言うに。
本音言えば俺かてなぁ、子猫に触りたいねん。モフモフしたいねん。
編集なんて仕事やっとると、作家と上に挟まれて結構ストレス溜まるんや。
癒されたいねん。
せやけど俺の魂の叫びには全く気付かず、

「一護サンは本当、可愛いっスねぇ…v平子サンもそう思うでしょ?」

相手は今日何度めになるのか――もう考えるのも嫌になる程繰り返された台詞を口にする。

その橙色の可愛い子猫――“一護サン”を抱きしめてにやけとるこの男は、名を浦原喜助言うてなぁ職業は作家や。
俺が勤めとる出版社をメインに、今売り出し中…いや、結構ブームになっとる作家や。
こいつの書いとるシリーズ物が人気急上昇で、色々とイベントやったり(話の舞台巡りツアー)、今度はドラマCD化とおかげでウチの出版社もホクホク顔や。TVドラマ化も話が進んでるんで、更にブームは続きそうやなぁ。
尤もその分、作者である喜助に負担が来る訳やけど。現に昨日までCDの脚本チェックで忙しかったとかで俺に愚痴っとった。

『…一護サンと遊びたい…顔モフしたい…ぎゅうしたい…』

まぁ確かにぎゅうして顔モフしとったら、チェック出来んわなぁ。見えるのはにゃんこの腹だけや。そんでな、

『そんなん、仕事終わってからたっぷりせいっ』

って電話口で檄を飛ばしとったら――仕事が上がった今日、本当に“一護サン”――猫をぎゅうしてモフっとった。
てっきりまだ仕事に追われてひーひー言ってると思っとったんやけど…、読みが甘かったわ。忙しそうやったら、その分俺が一護とラブラブするつもりやったのに。
とにかく俺が居間に通されてからこっち(…いや、その前からやな)、それはもう蕩けそうな顔をして、腕の中の一護を撫で撫で撫で撫で…(以下エンドレス)。
そして一護の方もそりゃぁもう、擦り擦り擦り擦り…(以下エンドレス)。
ちなみに“一護”は、喜助が取材先の遠野から連れ帰った子猫や。
めっちゃ可愛いでぇ。俺にも擦り擦りしてくれるし、肉球はぷにぷにやし、陽だまりでころんころんするし。

それによう気が利くしな。

この前来た時は『外暑かっただろ?』って直ぐに冷たいモノ持って来てくれてな。更には『…良かったら、これ摘まんで?』ってベーコンとチーズ、玉ねぎが入ったお手製のケーク・サレ(塩味の惣菜ケーキっちゅーか。まぁ甘くないパウンドケーキみたいなもんやな)まで用意してくれたんや。アレは美味やったなぁ…。

流石は齢150、遠野では『猫神様』扱いの、由緒正しい血統の猫叉だけあるわ。

え?料理と猫叉は関係あらへん?ええやん何でも。
とにかく一護は健気やでぇ?特に最近は喜助の手伝いがしたい言うて、結構人型の時が多くてな(ちょっと顔モフする機会が減って寂しいけど)。資料整理に喜助の身の回りの事まで、それはもう『新婚さんかおのれらは』言うてツッコミたいぐらいや。

まぁ最も俺もな、今はこう平然としとるけどなぁ、……最初に一護の正体を教えられた時は驚いたで?
何せ今のこのご時世に猫叉――『妖し』やなんてなぁ。
幾ら喜助との付き合いが長いから言うても、本当吃驚したわ。
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