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□聖なる日の過ごし方〜恋人はサンタクロース〜
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長い白い髭を携えて、ふくよかな体型を真っ赤な服で包んでいる。煙突(もしくは窓から?)から入って、子ども達にプレゼントをそっと置いて行く。
世間一般で言われる所の『サンタクロース』に、俺は逢った事が有る。
けれどもその人は。
スラっとした長身で、おまけに金髪碧眼、ついでに一人称は『アタシ』だった。


年も押し詰まった12月のとある朝、俺は何時もより早く起きるとすぐさま朝食作りに取り掛かった。普段はパン食が多いのだけど、今日だけは和食できっちり仕上げる。何せこの後山の様な事務処理と肉体労働が待っているのだ、それなりに栄養を摂っておかないといけないし腹持ち良いのはやっぱり御飯だよな。と言う訳で、炊き立てのほかほかご飯に具沢山のお味噌汁、アジの開きに出し巻き玉子とウィンナーを炒めて。それから海苔と漬物も用意して、他にデザートとしてヨーグルトにフルーツを添える。それらをカウンター式のテーブルにセットし終えると、俺はエプロンを外し、居間を抜けて一つ奥にある部屋に向かう。
勢い良く扉を開けて、隅のベットまで進むと遠慮無く羽毛布団を剥ぎ取った。暖かい布団の中からいきなり冷たい室温にさらされた所為で、芋虫の如く丸まっていた人物から、あ〜とかう゛〜等の苦情めいた声が漏れた。
「起きろ」
「……」
「起きろってば」
「……」
「…おい」
「……」
それでも意地でも起きようとしない人物に、今度は耳元で声を上げる。
「いつまで寝てんだ!今日は予定が詰まってんだぞっっ!」
ついでにその頬を軽くペチペチ叩く。
これでも起きなきゃ、次は頬っぺた摘んで広げてしまおうか。そう思った時だ。
「……酷…っスよぉ…」
未だ半分眠りの中にいるような、不明瞭な声で反応が有った。
「…アタシ…夕べ寝た…遅いんスからぁ…」
「自分の不手際の所為だろーが。まだ作業残ってんだから、さっさと起きて飯食えっつーの…、…って、何だよ」
ようやくもそもそとベットから半身を起こしたものの、それきり動かずじ〜と俺の方を見つめている。訴える様な不満そうな視線。
その視線の持つ意味に思い当たった俺は、その、照れ臭さを隠す為にわざと一つ溜息を吐いた後、
「…おはよう、浦原さん」
先程叩いた頬とそれから唇に、そっとキスをした。
「おはようございます、一護サンv」
最近ようやく慣れて来た、でもまだちょっと恥ずかしさが抜けない行為で赤くなった顔を見られ無い様に、急いで部屋から出ていく俺の背後で、ようやく浦原さんがベットから起き上がる気配がした。

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