拍手部屋

□Sleeping Beauty
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「…それで、さ。とにかく教室中…大騒ぎに…なって」
「はぁ〜…今時の学生サンって色々大変なんスねぇ」

アタシの相槌に『…な?浦原さんもそう…思うだろ…?』と返事を返しながらも、一護サンの語尾はだんだんと怪しく…と言うか、伸びて途切れがちになって行く。
アタシの指がゆっくりと髪を梳く度に、それが心地良いのか、一護サンはうっすらと目を細めて。
今にも眠ってしまいそうなその様子に、少々疲れさせてしまったかと些か後悔する。
後悔するけど…、…仕方ないですよねぇー、押さえが効かなかったんですモン。

未だ夕闇が辺りを包むには、少し早い時刻。
本来ならまだ学校に居る筈の一護サンが、何でアタシの部屋(正確には腕の中)に居るかと言うと――


『拉致』っちゃいました、アタシがv


だってぇ〜、我慢の限界だったんスもん。
先週末まで一護サンはテストの為、ウチへの立ち寄りを自主規制してたんですよ。当然お泊りも無し。
まぁ、その前から代行の仕事も忙しかったんですケド、それでようやくテストが終わったと思ったら、今度はアタシの方で至急の仕事が入ってしまいましね。
いや〜、あのクソジジィ……、いえいえ山本サンの依頼でも有りましたんで、ちゃんと片付けましたけれども。
一生懸命、寝る間も惜しんで頑張って。それでも四日ほど掛かっちゃいまして。
そんなこんなで中々逢えず仕舞いで、…え〜大人気無いと言われそうですが(夜一さんとかにですよ)、…余りの一護サン不足に我慢の限界を超えちゃいましてねぇー、週末まで待てませんでした(テッサイ達が怯えて、近付かなくなるぐらいでしたから、ね…)。

昼休み直前に出現した虚を退治に、一護サンが学校から離れたのを見計らって、そのまま拉致ってウチへ直行。
あ、勿論一護サンの躯にはコンサンに入って貰ってますからね、その辺のフォローはばっちりですよん。アタシがそんなヘマ、する訳ないじゃ無いっスかぁv

それはともかく、最初は顔を真っ赤にして怒っていた一護サンも、結局はアタシの部屋の布団に雪崩れ込む頃には許してくれましてね(…まぁそこに行くまでに濃厚なキスの一つや二つや三つ――どこの騒ぎじゃ無いですけど、色々と有りましたけど)。
一護サンの死覇装を脱がす間すらもどかしい、そんな切羽詰ったアタシとの口付けの合間。
零れる吐息と共に『…ったく…仕方ねぇ、な――』って一護サン微笑ってくれて。
聞き分けの無い子供をあやす様に、一護サンの指がアタシの頬を優しく撫でて。それを切っ掛けに、アタシの押さえに押さえていた理性がぷつんっと切れて――後はもうご想像の通りです。


所有の紅い花びらをその身に万遍なく咲かせ。

甘い嬌声と共に縋りつく、腕と足の熱さに堪え切れなくて。

何時もより早いペースで、何度も深く繋がって穿って。


意識を飛ばしてしまった一護サンを清めた後、それでも素肌に触れていたくて、ずっと抱き締めてその寝顔を見つめてました。
暫くしてから気が付いた一護サンに、
「…ちょっとは……、自重しろよな……///」
って言われちゃいましたけど。
その後も他愛もない会話を交わしながら、でも腕はずっと一護サンを抱き締めたまま。
時折触れるだけの口付けを落として。


――それにしても。


「……アタシって…こんなにも堪え性が無かったんスねぇ――」

小さく、呟いた。
思い返せばアチラ(尸魂界)に居た頃は、大抵開発局に篭りっきりの方が多くて、あんまりこの手の事とは無縁だった様な気が。
そりゃたまには遊郭とかへも顔を出しましたけど、付き合いと言いますか義理で行った様なもんですから。
淡白と言いますか〜…、まぁそんな感じでしたからねぇ。
だから。

「……ん…」

気が付けば胸元から聞こえて来る、微かな寝息。
抱き締めていた手でゆっくりと一護サンの背中を撫でると、無意識なのか甘える様にアタシに擦り寄って来た。
そぉっと抱き締め直せば、腕にすっぽりと収まる細い躯。


誰よりも何よりも愛しい――ただ一人の存在。


見た目と違う軟らかい感触の髪を、再びゆっくりと梳けばアタシの胸元にそっと頬を寄せて来る。その様が何とも、愛おしくて。

愛しくて――そうしてもっと。

もっと触れたいと願ってしまう。
あんなに何度も交わったと言うのに、今も尚、足りないくらいで。思わず自身の感情に苦笑を浮かべてしまう。
全く…良い歳をした大人が逢えない時間に悶々として、そして目の前にすれば今度は簡単に理性を飛ばしてしまうだなんて。

「…我ながら何ともまぁ、情けないと言いますか呆れると言いますか――」

こんなにも一人の存在を欲して、想って、耐え切れなくなって――こんな激しい感情が自分に有ったなんて…今まで想像すらしなかったですよ。



一護サンに出逢うまでは。


キミを――想うまでは。



「…一護サン」

緩く開かれた口元へと、そっと触れるだけのキスを贈る。

「…大好き…ですよ――…」

こんな言葉だけでは伝えきれない、キミへのこの想い。
聞こえていないと分かりつつ、それでも一護サンにそっと囁けば。



「……俺、も……き



思いも寄らずに返って来た、言葉。

「…っい…一護…サン?」

慌てて視線を向けるて見るものの、でも一護サン本人はと言うと、…しっかり(と言うのも変かもしれませんが)眠っていて。

「…んっ…好、き………」

…ひょっとして……、寝言…っスかねぇ…?
いえ、寝言でも何でも嬉しいっスけど。
一護サン普段は余り、その類いの台詞って口にしないですしね。
何となく嬉しくて、また一護サンの耳元で「…好きですよ」と囁いてみる。
流石にその後は一護サンから言葉が返る事は無かったんスけど、その代わり、まるでアタシに応えるかの様に。一護サンの腕がアタシの背中に回され――ぎゅっと力が込められて。
そして益々その身をアタシへと寄せて来たんですよ。

「一護サン…――」

再びアタシの耳に届く、安心しきった穏やかな寝息。
腕に掛かる重みにすら、愛おしさを感じながら。


「…誰よりも…愛していますよ――」


アタシはゆっくりと囁く。

聞こえていない筈のソレに、けれどもふわりと綻ぶ一護サンの口元。
そんな一護サンにアタシは繰り返し、触れるだけの優しい口付けを贈った。

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