拍手部屋

□Like a sigh to overflow, merely hug beloved you
1ページ/1ページ

「―― 一護サン、さ、ドーゾ」


ソファに座り背もたれに躯を預けると、アタシは愛しい存在へと声を掛けた。
両手を広げ満面の笑みで相手を見れば、一護サンは物凄い勢いでアタシの腕の中に飛び込んで来る。
その柔らかく、暖かい躯をぎゅぅっと抱き締めると、頬に当たるちょっとザラっとした小さな濡れたモノ。
ぺろぺろと舐めて来る一護サンの頭を軽く撫でれば、それが嬉しいのか、舐めるのを止めてスリスリと頬ずりして来る。
顔に触れる、暖かくて柔らかい『ふかふかの耳』。
其処からお陽様の良い香りがして、アタシはうっとりと目を細める。

「…あぁ、日向ぼっこしてたんスねぇ。今日も良い天気でしたから」

アタシが仕事(原稿)をしてると、どうしても一護サン暇になってしまいますから。
アタシの邪魔にならない様に、大人しくしていてくれたのかと思うと、もう一護サンがいじらしくて(だって膝に乗せてたら、アタシ我慢出来なくて一護サンをずっと『ぎゅ〜v』しちゃいますモン)。
もっともっと沢山構って上げたいんですけど、仕事放って置く訳にもいかないし…。

――でも、ね、こうして仕事さえ終わってしまえば。

こうやって思う存分抱き締めて、その柔らかな毛並みを堪能する事が出来ますから。

「本当、一護サンは可愛いっスねぇvv」

まだまだ子猫の域を脱し無い、アタシの両手にすっぽり収まってしまう小さな躯。
力を入れ過ぎない様に注意しつつ、掌全体でゆっくりと橙色の毛並を撫でる。
何時触っても心地良い手触りで、アタシは何度も何度も繰り返し撫でた。
時折そっと喉下を擽ると、一護サンはゴロゴロと喉を鳴らす。気持ち良いのか、琥珀色の瞳を細める様も…また愛らしくて可愛くて。

「…大好きですよ」

ちゅっと鼻先へのキスを繰り返せば、小さくみぃーと言う返事が返って来て――



「…俺も、大好き――」



言葉と共に首に回される、しなやかな腕。
先程まで触れていた柔らかな毛並みの代わりに、しっとりと掌に馴染む滑らかな背中。
愛らしい耳と尻尾はそのままに、ぐんと重みを増した愛しい存在はアタシの頬に自分の頬を寄せて来る。
先程のキスのお返しとばかりにアタシの鼻先に何度も何度も口付けて。

「一護サーン、…くすぐったいv」

人型になってもそれでもまだ細い躯を膝の上で抱き締め直し、アタシはくすくす微笑(わら)いながらその鮮やかな橙色の髪を優しく梳いた。すると一護サンは、アタシの髪に自分の指を絡めながら

「…くすぐったいの?」

こくん、と。小首を傾げて不思議そうにアタシを見詰めた。

「えぇ、ちょっとだけ」

その顔を可愛いなぁ〜と思いつつ、額を合わせる様にして琥珀色の瞳を覗き込む。

「俺は凄く気持ち良いんだけど――。ん…と、じゃあ、此処ならくすぐったく無い?」

そう言ってアタシの口元に触れてくる、一護サンの柔らかな唇。
啄ばむ様な可愛らしい口付けは一旦離れると、小さな艶やかな舌でぺろっとアタシの下唇をなぞり――そして再び重なって来る。
何度も重ねる内に、一護サンの目元が自然にほんのりと赤くなって行って。まるで花が綻んで行く様なその状況を楽しみつつ、アタシは一護サンの滑らかな頬へそっと触れる。
それを合図に重なっていた唇はゆっくりと離れて行き――

「――うん、これなら…ね?気持ち良いですよ」

少し心配気にこちらを見つめている一護サンに、甘い吐息と共に返事を返せば。
ふわんと、一護サンは微笑んだ。

「良かった…」
「――でもね、一護サン」
「何?」
「…人型になるなら先に教えて下さいね?着る物持って来ないと――」

猫の姿から人型へとなった場合、当然一護サンは裸ですからね(ちなみに人型から猫になる場合、一護サンは着ていた服を脱いでちゃんと畳んでから姿を変えます)。幾ら最近は寒さが緩んで来たとは言え、何も着ないでいるのはマズイでしょ。

其れに――刺激が強いって言いますか。今のキスだけで一護サン、うっすらと熱を持って来てますもん。
あんまりくっついていられると、その、ねぇ?理性が保てないって言いますか。
苦笑するアタシにけれども一護サンは、

「こうやってくっついてたら、俺寒くないけど?」

匂い付けするかの様に、アタシの首筋から胸元へと掛けて顔を摺り寄せる。


…いえね、そーじゃ無くて(涙)。


ちょっとだけ焦るアタシの気持ちとは裏腹に、一護サンはアタシの背中に腕を回して、更に躯を押し付けて来る。

「だって…こっちの姿じゃ無いと、浦原さんを『ぎゅ〜』出来ないじゃん。
浦原さんに『ぎゅ〜』されてる時、俺凄く嬉しくて気持ち良いから…、だから、浦原さんにも同じ風にしたいなぁって。そう思ったらつい――」

人型をとってしまっていたのだと。

「え〜とっ人型になるのは別に良…「俺だって浦原さんを『ぎゅ〜』したいの。…ダメ?」」

アタシのセーターの胸元に半分顔を埋めたままでの上目使い(『うにゅ〜』の擬音付き)+ダメ押しとばかりのスリスリ+抱きしめている躯の、熱。


――すみません、アタシ限界越えました。
……一護サン……もう可愛い過ぎっスよ……。


「…ダメじゃ…無いっスよ――だから、ねぇ?アタシも一護サンを…もっと『ぎゅぅ』しても良いっスか?」

膝に腰掛けている一護サンの躯をそっと抱き上げて。

「――アタシの部屋で」

沢山、ね?
とびきりの甘い声で耳元に囁けば、先程よりも更に朱に染まる一護サンの頬と肌。
密着する下肢から伝わるアタシの熱に溶かされて、少しずつ艶を帯びて行く蜂蜜色の瞳。

「――ねぇ一護サン…。…『ぎゅぅ』して良い…?」

返事を促す様にふかふかの耳を甘噛みすると、その愛らしい耳はぴるぴると震えて――背中に回っていた指先が、ぎゅっとセーターを握り締めた。
額や目元にキスを降らす度に、甘い吐息が絶え間なく零れて。

「……うん…、一杯『ぎゅぅ』…して?」

愛しい存在からの待ち望んだ答えを受けて、アタシはその躯を強く抱き締める。



「――勿論。…一護サンの望む限り、ゆっくりとね?」



愛しい相手を『ぎゅう〜』するのって――本当に、嬉しくて心地良くて…幸せな気持ちになりますよね?


「……大好き、浦原さん…――」
「アタシも、ですよ…。ね、一護サン――」


そうしてアタシ達は、その後ずっと。
お互いに仲良く『ぎゅぅ』して――甘い、幸せな時間を過ごしました。
    

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ