四天ぶっく

□本気
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久しぶりに会った彼は、少しばかり大人びた顔立ちをしていた。最後に会ったのはいつだったか。3年前の高校の卒業式以来、メールはたまにするものの、会うことはなかったはず。中学、高校とずっと一緒に過ごしていた彼が、こんなに遠く感じる日が来るなんて思いもしなかった。



「よ、よお。久しぶりやな。」

「うん、久しぶり。」



声や話し方はあまり変わっていなくて、まるでついこの間も会ったかのような錯覚に囚われる。けれど、やっぱり少し、緊張した。
それもそうだ。彼はあたしの初恋の相手で、今でも少しドキドキしてしまうくらいなのに、そんな彼と久しぶりのご対面で平然としていられるわけがない。偶然目があって思わず反らせば、ドギマギとした空気が流れた。



「……な、なんや、あれやな。」

「な、何や。」

「緊張、せぇへん?お、俺だけ、やろか?」

「け、けけ謙也だけちゃう?」

「いや、名無しさんもどもっとるやん。」



気のせいだと言いたいところだけど、これ以上喋っても墓穴を掘るだけの様な気がするから、あたしは不満を顔で表現した。つもりだったのに、あたしを見た途端に彼は飲みかけていたビールをあたしに向かって盛大に吹き出す。それはつまり、あたしの顔が変だったということだろうか。



「な、何やねん!汚いし、人の顔見て吹き出すなん失礼なやっちゃな!」

「すまん、堪えきれへんかって……」



そう言っておしぼりで机を吹きながら謝る謙也に、あたしは小さい拳骨を一発お見舞いする。堪えきれないってことは結局、あたしの顔がそんなに変だったってことじゃないか。本当にもう、デリカシーのないところは変わらないみたい。
見れば見るほど、考えれば考えるほど、どうしてこんな男を好きになったのかわからなくなる。それくらいにヘタレで、デリ無しーで、取り柄と言えば“浪速のスピードスター”くらいのつまんない男なのに。
そんなことを考えながら謙也を黙ってみていると、机を吹き終わってふと顔を上げた謙也と目があって、謙也に怪訝な顔をされた。



「……何やねん。」

「ん、何が?」

「いや、俺んことガン見しとったから。」

「……え、嘘やん!」

「無意識!?っちゅーかそない嫌そうな顔すんなや!」



そんなにガン見してたつもりはなかったから、突然そんなことを言われたあたしは思わず素っ頓狂な声を出す。それに驚いた謙也も謙也で素っ頓狂な声を出すもんだから、周りの皆に「相変わらずやなー」なんて笑われる始末。あぁもう本当に恥ずかしい。
おまけに、謙也からの「飲み過ぎたんちゃう?顔赤いで?」なんて言葉に、さらに顔が熱くなって。一発殴ってやったけど、この鈍感男は「何で!?」と返してくるだけだった。



「あたしやっぱり、何で謙也と仲良ぇんか、自分でもわからへんわ。」

「何やねん、急に。っちゅーか、それどういう意味やアホ。」

「やって謙也……アホやし、ヘタレやし、情けないし。」

「ボロクソやな…!せやけど名無しさん、いつも俺んこと頼って来とったやん。」

「せやねん。やから、何でやろなー、と。」



本人を前にして“仲良い”って言うのは少し躊躇いがあったけど、そこに対して謙也は特に何も突っ込んでこなかったから、少しだけ安心。だけど、強く言い過ぎたせいか、謙也が少しだけ涙目になりかけているのに気付いて、思わず「すまん、言い過ぎた…?」と声が漏れる。すると、謙也は突然目を見開いて「な、何やねん…!名無しさんが謝るなんて気色悪いで!」と、失礼すぎる一言を発した。



「謙也…せやから彼女出来ひんねん、ドアホ!」

「す、すまん!そない怒らんでもえぇやろ…!」

「謙也が涙目やったから謝ったったんに!」

「そら好きな女にボロクソ言われたら泣きたくもなるっちゅー話や!」

「……………は?」



あたしが答えるのと、謙也が顔を真っ赤にして口を塞ぐのはほぼ同時で、会場が静まり返るのもほぼ同時だった。集まる視線から逃れるようにビールを一気飲みしようとしたら、変なところに入ったらしく、咽るあたしが本当にカッコ悪い。
すると不意にメール受信の唸りを上げる携帯を見れば、それは目の前の彼からのたった一言だった。


“本気やで。”




Round about


(20110928)2010・2011よろ企画「ら」

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