四天ぶっく

□求めたものは、
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「俺はそないカッコえぇ奴ちゃうねん。」



自分の彼女が他の、俺以外の男と話しとるとこ、見てて平気なわけないやろ。普段はカッコえぇ男装って平気なふりしとるけど、ホンマはそういうんめっちゃ悔しくてしゃーないねん。俺が居るのに他の男と話すっちゅーことは、つまり名無しさんが俺以外の男も眼中に入れとるっちゅーことやし。それが悔しくて悔しくて、情けなくてカッコ悪いけど嫉妬しとる。

そう言い終えた謙也は、顔を俯かせながらガシガシと頭をかいた。



「うん、わかってる。」



その言葉は、謙也には少し失礼だったかもしれない。そう思ったけれどあたしの予想とは裏腹に、謙也がいつものように騒いだり怒ったような態度をとったりすることはなかった。
目の前に見えるのは、ただ、謙也の不安そうな表情。こんな謙也を初めて見たと思われるあたしには、どう対処すればいいのかわからなくて、謙也は泣きそうで。



「俺んこと、き…、嫌いになった?」

「いや、そういうことじゃなくて、その…」

「言うてくれな、わからへん……。」



そんな顔しないで、泣かないで、あたしが悪かったから。
思わず謙也を抱き締めてしまったのは、彼の泣き顔を見るという苦痛から逃れたかったから。卑怯で最低、それがあたしだってこと、謙也もわかってるはず。

あたしはただ、謙也があたしの為に怒る姿を見たかったの。あたしと男が話してる所を堂々と邪魔して「お前、俺の女と話しすぎや」とか、そういうことを言ってくれるのを心のどこかで勝手に期待してた。いつもはヘタレかもしれないけど、本当はそういうこと出来るんだ、って。そういう夢を見るのって女の子の特権でしょ?


言えば、ヘタレちゃうわ!なんていつもの調子で返してくる謙也に、あたしは心なしか安心というものを感じた気がする。



「やっぱり謙也はそのままで良いや。」

「……?」

「あたしは、今の謙也があたしにとって大切な『謙也』である限り、好きって言う気持ちを覆す気はないよ。」

「アホか、」



照れ隠しの一言を発しながら、一瞬にして謙也の顔が赤くなったのがわかった。そんな謙也を見ながら心のどこかでだなんて可愛い思ってるあたしは、きっとこれから先で謙也がカッコイイ台詞を言ってくれなかったとしても、満足でいるんだと思う。



求めたものは、

(110217.闇風光凛)

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