四天ぶっく

□custard pudding
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「お前なぁ…!」

「ふんっ、あたしは小春ちゃんと付き合うんやもん!」



我がテニス部の部員であるユウジとマネージャーの名無しさんちゃんは、只今絶賛夫婦喧嘩中。(なんや漢字ばっかりで読みにくいなぁ…。)『夫婦』っちゅーのを聞いて察しの通り、2人は恋人同士。そこで、いかにも面白くなりそうな2人の喧嘩を観察してやろうっちゅーことや。
あ、因みに解説は私(わたくしって読むんやで!)、聖書(バイブルや、バイブル!)こと四天宝寺中テニス部部長の白石蔵ノ介がお送りいたします。なんてカッコ付けて言うてみたけど、要は喧嘩見て楽しむだけや。



「何でそうなるんや!たかがプリン食べたくらいで起こりすぎやお前!」

「たかがプリン!?プリン侮辱すんなや!ユウジより億万倍も大切なんやで!」

「意味わからんわ!」



2人の会話からして、今回の喧嘩の原因はユウジが名無しさんちゃんのプリンを勝手に食べたとかそんなところやろうな。せやけど彼女にプリンの方が億万倍大切や言われるユウジも可哀相やな、色んな意味で。



「意味わからなくて結構ですー!あたしはもうユウジと別れる!小春ちゃんの方が頭もえぇし絶対幸せにしてくれるわ!」

「せやから何でそうなるんや!」


名無しさんちゃんは小春をぎゅーっと抱きしめて、ユウジは名無しさんちゃんの腕を小春から離そうと頑張っとる。端から見たらただの小春の奪い合いや。まぁ奪い合いやない、とは言い切れへんけど。



「大体、ユウジはプリンの大切さがわかってないんや!」

「な、何やねん、プリンの大切さって!」

「ユウジは風邪ひいて食べ物が喉通らななったら何食べるん!」

「何って…ゼリーやけど。」

「なっ!?あ、有り得へん!それが頭おかしい理由や!風邪ひいたらプリン!3時のおやつにプリン!間食もデザートもプリン、学校から帰ったらプリン、帰り道でもプリン、授業中にもプリンや!」



いや授業中はあかんやろ!
そう心の中でツッコむのとほぼ同時、ユウジがツッコむ。と思っとったのに、俺の予想は的を外した。俺の予想ではツッコむはずやったユウジは、名無しさんちゃんに向かって目を見開いとる。



「お前…断固プリン派の人間やったんやな。」

「…うん。」

「…わかったわ、」



これはもしかして、別れ話?やったらすぐに止めなあかん!なんて言うても俺に止める権利ないし、もしかしたら止めない方が2人にとっては幸せなんかもしれへん。仕方ない、このまま見届けよう!



「俺もプリン派になる!」



はぁぁぁああ!?別れ話ちゃうんかい!真剣やったから誤解したやんけ!あぁもう…阿呆らし。



「ほんまに!?」

「おん。実は…俺もプリンに憧れとったんや!せやけど家族はゼリーばっか買うてくんねん!せやから俺…」

「ユウジ、もうえぇよ。プリンならあたしん家来て食べればえぇやん。」

「名無しさん…!」



俺は2人…いや、小春も入れて3人に背を向けた。俺は聖書(バイブルやで!)失格や。初めの時点で肝心なことを忘れとった。2人は…阿呆と阿呆で形成されたバカップルやったわ。なんや、肩透かし喰らった気分や。

微妙なショックを引きずって歩いとると、部室から声が聞こえて来て。思わず聞き耳をたてて、こっそり部室の裏にある窓の下に隠れる。多分、声からして財前と謙也や。(謙也や、って言いにくっ!)



「有り得へんって何でやねん!」

「そんなん邪道としか言いようがないっすわ。たまにならまだしも、毎日朝と夜?はっ、笑わしてくれるやないですか。」

「邪道って何やねん!せやったらお前の方が邪道やろ!」



何の話やろうか、なんて考えを張り巡らしとる時やった。俺が寄り掛かかっとる壁が、内側から蹴られたような殴られたような音が急にして、異常なまでにドキッとした。俺の予想では、財前が壁に怒りをぶつけたんやと思う。それはともかく中の様子を覗いてみよう、そう思った時。



「善哉のどこが邪道やねん!もういっぺん言うたらいてこますどごらぁ!」



怖っ!あかん怖い!めっちゃ怖い!財前が今どないな顔しとるか考えると尚更怖いわ!っちゅーか謙也、大丈夫やろか…!絶対襟掴まれて『金出せや』とかいう脅迫みたいな感じで睨まれとる…!それにしてもこいつ等は善哉と何で争っとるんやろか。



「ぷ、ぷぷプリンは邪道ちゃう!」



ってこいつ等もプリンの話かーい!まぁこっちは初めから決着ついとるようなもんやけど。さて、俺はこの場から立ち去るとしよう。巻き添えは勘弁やからな。


custard pudding

(ユウジ大好き!)(俺もやで!)
(死ねぇぇえ!)(ひぃっ、すんませんっ!)



(20100402)

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