四天ぶっく

□困惑、困難、困憊
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たまに疑問に思うことがある。俺が好きなあいつ、名無しさんはどこまで天然なんやろか。部長の妹であるはずやのに、部長と違って天然で何か抜けとる。



「名無しさん、好きなんやけど…」

「ほんま?おおきに!」



恒例行事みたいに告白されとるのに、彼氏が出来ひんのもそのせいやと思う。告白が告白やとわかっとらん、そう部長も言っとった。ほらまた、告白した奴が肩下げて歩いとる。



「財前!」

「あ、謙也さん」

「あー、名無しさんまた告白されとったんやな。」

「告白やって思っとらんみたいですけどね。」



俺が告白出来ひんのも、名無しさんが天然やからで。告白してもわかってもらえんのやったら意味ない、やからってこのまま誰にもとられないとは限らへんし。



「財前は告白せぇへんのか?」

「はい?」

「好きなんやろ?」

「告白しても伝わらんかったら意味ないやないですか。」



吐き捨てるように呟けば、謙也さんは首を傾げて「そうやろか?」なんて聞いてきて。不本意やけど、どうしたらえぇのか聞き返してしもうた。
やけどやっぱり大した答えは出なくて、確実に謙也さんに聞いた俺が阿呆やったし、別に期待もしとらんかったから構へんかった。



「焦っても変わらんと思うんで。」

「にしては焦っとるように見えるで?」

「うっさいっすわ。」



いらんこと言う謙也さんに蹴りを入れて練習再開。マネージャー業をする名無しさんがちらほら目に留まるけど、それを無視して練習に専念する。
やけどやっぱり気になって目で追っとれば、球拾いしとる最中にド派手にこけた名無しさんの姿が目に映って。気付けば俺は名無しさんに向かって走っとった。



「った…!」

「何しとんねん阿呆」

「あ、阿呆ちゃうもん!ボールが虐めてきたんやもん!」

「お前は餓鬼か。」

「光より1ヶ月年上やもん!」



言いながら起き上がって胸を張る名無しさんに、軽い拳骨を食らわせる。するとそれを避けるようにした途端にまた転ぶもんやから、俺は思わず吹き出してしもうた。



「そういう意味ちゃうわ。っちゅーか何でもかんでも“もん!”って付けんな。」

「う、煩い!光の意地悪!」

「別に意地悪してへんし。」

「うっさい変態!」

「それは自分の兄貴に言いや。」

「う、うぅ…!」



否定出来ひんらしく黙り込む名無しさんを部長が見たら何て言うんやろ、なんて考えるだけでおもろい。妹に変態て思われる部長って、一体何なんやろか。



「可哀相やな、妹にまで変態て思われとるなん。」

「私は別に思ってない、はず…」

「はず、やろ。」

「否定出来ひんのが悔しい、もん…!」

「せやから無意味に“もん”って付けんな阿呆」



“もん”とか可愛過ぎや。せやけどそれが可愛ぇって気付いとらん名無しさんはもっと可愛くて、周りの男等が惚れるんもわかる。俺もその内の1人やけど。
阿呆阿呆言い過ぎや!なんて叩いてくる名無しさんを鼻で笑ってやれば、ムスッとした顔で「鼻デカなっても知らんからね!」って言われて。少し凹んだんは俺だけの秘密や。



「とにかく名無しさん、球拾いせんでえぇわ。危なっかしいっちゅーねん。」

「危なくなんかないで!もう転ばへんもん!」

「そういう事やなくて、」



よちよち歩きしながら球拾いする名無しさんに絶頂(エクスタシー)感じとる奴が、少なくとも部長の他に1人居るんや。
本気、やった。俺的には。せやけど大事なことを忘れとって、こいつは天然なんやった。首を傾げる名無しさんを見て、思わず溜息。阿呆みたいや、俺が。



「光、意味わからへん!」

「笑顔で言うな、この鈍感女」

「ど、鈍感!?私のどこが!」

「そこ」

「どこ!」



それが鈍感やっちゅーんに。まぁ、いくら言ってもわかってもらえへんっちゅーことは、重々承知の上や。
もう一つ溜息をついて、それから名無しさんの襟を掴む。端から見たら喧嘩みたいかもしれへんけど、そんなん知ったこっちゃない。無理矢理に唇を重ねれば、真っ赤な顔した名無しさんが目に映った。



「き、き、き…!」

「いくら鈍感でもこうすればわかるやろ」

「…く、蔵兄に報告してくる!」

「はぁ?」



困惑、困難、困憊


(蔵兄!私、光と付き合う!)
(はぁ?ほんまか財前)
(色々すっ飛ばされたけど、まぁ、)
(お、俺は認めへんで…!)
(部長に名無しさんが止められるんすか?)
(…………聞いてくれるな、財前)



(20100131)

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