四天ぶっく

□結婚前提でよろしゅう
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「謙也くん謙也くん、」

「…何やねん」

「なっ…こら謙也!」



突然話し掛けられた、かと思えば何故か怒られた。上手く理解出来ひん俺に、名無しさんはわざとらしい溜息とベシッっちゅー音が鳴るくらい痛い、いや大して痛くない平手打ち。



「ノリが悪いわ!」

「あ、そういうことか」

「何を今更納得しとんねん!」

「すんませんっ!」



その大して痛くもない平手打ちをしてくる名無しさんに何故か謝る俺は、今めっちゃカッコ悪い気がする。まぁそれはそれで仕方なくて、名無しさんの「やり直しや!」という声と共にされた平手打ちに、またしても「すんません!」と謝る俺。



「謙也くん謙也くん!」

「何ですか何ですか!」

「宿題、写さして写さして!」

「えぇですよえぇで…って何でやねん!」

「幼馴染みやろー?」



幼馴染みやからって、それのどこに宿題見せる理由があるんかわからへん。しかも昨日の宿題は、苦手科目なだけあって苦労した世界史。



「嫌や!俺が努力したっちゅーのに!」

「その努力が無駄にならんように使ってあげるんやって!」

「ほんまは宿題忘れの罰で一発芸やるんが嫌なだけやろ!」

「チッ、ヘタレ謙也のくせに!」

「舌打ちすんなや!ヘタレちゃうわ!」



っちゅーかそれ、今の会話に関係ないやろ。そんな意味を込めて溜息をつけば、それだけでまた平手打ち。虐めと言っても過言やないと思う。



「なー、お願いや!後で恩返しするから!」

「そこまで言うんやったらしゃーないわ!」

「やったー!」

「俺の半分はバファリンやからな!」

「うん?半分薬なん?」



何でそうなるんやろか、比喩表現のつもりやったのに。「違うっちゅーねん!」なんて答えれば、名無しさんは少し考えてから「わからんわ!」と平手打ちしてきた。



「半分優しさっちゅー意味や!」

「あぁ、そういう!まぁ謙也の半分がバファリンなら優しさは4分の1だけどね!」

「………」

「あ、もしかして今気付いたん?阿呆やー!」

「う、うっさいわ!俺の存在が優しさやっちゅー話や!」



言ってから気付いたけど、俺の存在が優しさって阿呆みたいやん俺。せやから言ってすぐ名無しさんが大爆笑しだしたことは我慢することにした。



「まぁおおきに!」

「恩返しとか言うていらんことせんといてな!」

「……………うん、」

「何やねん、その間は!」



まるで、恩返しとか言って悪戯しようと思ってたのに、と言わんばかりの顔をする名無しさん。そんな名無しさんに「せんといてな…?」なんて軽い釘をさして宿題を手渡す。



「ほんまおおきに!」

「あぁー俺の努力が…!」

「そないなこと言われたら気ぃ引けるからやめてやー!」

「気ぃ引けとるような表情ちゃうやろ!」

「あはは!」



まぁこないなこと、もう慣れたけどな!悔しくないで、自分の努力が利用されたとしても!が、我慢や謙也…!なんて心の中で自分に言い聞かせながら、俺は名無しさんによって書かれていく文字を見つめとった。


それから少しして全て写し終えた名無しさんは、笑顔で宿題を返してきた。こういう時にふと思うのが、名無しさんは可愛ぇっちゅーことで。未だにこの笑顔には慣れへんし、寧ろどんどん可愛くなっとると思う。



「やっぱ医者ん息子は作りがちゃうな!」

「どこがや?」

「全体的に。ちゃんと努力するように作られとるんやな!」

「名無しさんが努力しなさ過ぎるだけやろ!」

「やって私、努力せんと生きてくって決めたし。」



それ、どないやねん。ツッコミを入れる気力すら無くなってまうくらいに、俺は唖然としてもうた。



「何っちゅーか…素晴らしいな。」

「おおきに!」

「褒めてへんし!」

「ちぇ」



そう小さく悪態ついた名無しさんは、ぐだっと机に伏せて俺と目を合わせた。無意識なんか意識的なんかはわからんけど、名無しさんは上目遣いの状態で。俺は思わず目を反らす。



「ところで、」

「おん?」

「さっきの恩返しの話、私と付き合うってことやったらあかん?」

「え?…え?」

「何で2回聞き返しとんねん、阿呆。」



阿呆、とか言われても、これは2回聞き返しても仕方ないと思う。大体、つ、付き合うとか急に意味わからへんし!



「折角美女が告っとるんやし。」

「自分で美女言うな!」

「謙也、私んこと好きなんやろ?」

「そ、それは、その…!」


結婚前提でよろしゅう


(良い恩返しやろ?)
(おん…!)
(お釣りにキスは?)
(あ、阿呆か!釣りは無しや!)
(ちぇ)



(20100125)

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