四天ぶっく

□笑顔注意
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「けーんや!」



アカン、いつもの事やけどめっちゃ可愛ぇ!
小走りで駆け寄ってくる名無しさんは、テニス部のマネージャーであり、財前の大親友。そんでもって俺の彼女や。そんな名無しさんが抱き着いてくるのを受け止めると、名無しさんと一緒に来たであろう財前に嘲笑われた。



「謙也さん、顔真っ赤ですよ。」

「う、うううっさいわ黙っとけ…!」

「はっ、吃りまくりですやん。」



なんで名無しさんはめっちゃ可愛ぇのに、大親友の財前はこうも可愛くないんやろか…。元はといえば、財前がマネージャーとして名無しさんを連れて来たんがきっかけやった。初めは、よう頑張っとるなーくらいにしか見とらんかったのにな。



「もう!2人とも言い合ってないで着替えておいでよ!」

「あぁ、せやな。」

「へーい」

「ったくもう!」



名無しさんがそう言うから、俺と財前は部室に向かう。財前が名無しさんの言うことやったら素直に聞くんは、なんやちょお気になるけど…。



「せや、謙也さんの彼女、今日の午前中ほぼ爆睡しとりましたよ。」

「まぁいつもの事やからえぇんちゃう…?」

「謙也さん、鈍感っすか。」

「は!?別に鈍感ちゃうわ!」

「鈍感ですやん。…寝顔、バッチリ見させてもらいましたわ。」



ニヤリと口角上げる財前を思わずど突きそうになるのを堪えて、何見とんねん!と反抗すれば、俺の反応を楽しんどる財前はまた口角上げる。せやから可愛くないねんコイツは…!



「それから明日、名無しさんと遊ぶんで。」

「え、ちょ、ほんまに…?」

「ほんまっすわ。名無しさんと俺の2人で。まぁ大親友なんやからえぇですよね?」

「おん…まぁしゃーないけど……。」



彼氏は俺な筈やのに、財前の方が名無しさんと仲良うしとる気がして悔しい。着替え終わって部室から出た時も、先に部室から出た財前が名無しさんと話とって。これは暫く無視して、名無しさんにもしっかりわからせるべきやと思っても、名無しさんから話し掛けてきて敢え無く断念する始末。



「謙也、着替え終わったー?」

「おん、終わったで!」

「浪速のスロースターさん遅いっすわー。」

「スローやなくてスピードどや!」



結局いつも通りに部活を終えて、俺と名無しさんと財前はいつも通り一緒に帰る。正直財前は居ない方がえぇんやけど、俺のちっぽけな勇気やったら除け者にも出来ひんし。



「光、明日の何時に行けば良い?」

「別に何時でもえぇで。」

「じゃあ朝から行って良い?」

「常識踏まえたくらいなら。」

「じゃあなるべく早起きしててね!」



楽しそうに財前と明日の話をする名無しさんを見ながら、そういえば財前が明日名無しさんと遊ぶとか言っとったなぁ、と思い出す。にしても名無しさんと財前の会話に俺が入れないことがすごく悔しくて。



「ん、どうしたの?」



思わず手を繋ぐと、名無しさんは笑顔で俺を見てきた。「何でもないで」そう答えたら、また名無しさんはどこか嬉しそうに笑う。



「後輩に嫉妬なんてダサいっすわー。」

「べ、べ別に嫉妬してへんし…!」

「ほな何で吃っとるんすか。」

「嫉妬してくれたんでしょ?ありがと、謙也!」

「お、おん……」



あぁもう、こない可愛ぇ顔でお礼まで言われてしもうたら、何も言い返されへんっちゅー話や…!財前は財前で、名無しさんに見えんようにクスクス笑っとるし。



「あ、そうだ!明日謙也も一緒に行く?」

「えぇん?」

「別に構へんっすわ。」

「ほな俺も行くわ…!」



あかん!誘われるなん思っとらんかったからめっちゃ嬉しい…!財前にニヤニヤすんなって蹴られたけど、これでにやけない方が無理やっちゅーねん!



「名無しさん、ほんまに好きやーっ!」

「ちょ、どうしたの!?」

「ヘタレやない謙也さんって、それはそれでキモいっすわ…」

「この際キモくてえぇわ!」

「あかんわ名無しさん、この人頭おかしい。」



いくら人気が少なくてもここは公道やのに、俺は名無しさんを抱きしめてキスをした。が、唇を離した途端、一気に顔から火が噴き出しそうになって。



「う、うわわわ何しとるんやろ俺!きゅっ急にすまん…!」

「あ、ヘタレた。」

「結局ヘタレとかダサいっすわー」

「うううっさい!」



すると俺が必死に顔を隠しとる手を除けて、名無しさんが突然俺にキスしてきたから、俺の顔は更に紅潮。名無しさんを見ればめっちゃ笑顔で。


笑顔注意


「私も謙也大好き!」と言われて返事をしようとした。がその瞬間、あろうことか俺はド派手に転んでしもうたっちゅー話や。



(20091229)

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