四天ぶっく
□砂糖が如し
1ページ/1ページ
「は?サボる?」
「当たり前や」
「何でや!」
「つまらんからに決まっとるやろ」
しれっと言う光に悪びれた様子は一切無くて、真面目に授業受けろとか言うあたしの方が馬鹿みたい。やけど折角席替えで隣になったっていうのに光が居ないなん有り得ないし、何のための席替えやったんか理解出来なくなる。
「あたしが隣やのにつまらんの?」
「…そこまで言うならしゃーないわ」
「へへっ」
上目使い気味に頼んでみれば、さっきまで立ち上がっていた光は溜息と同時に席に着いて。「やった」なんて小声で呟けば「仕方なく、やからな阿呆」って拳骨。痛くはないんやけど何や悔しい。
「次の授業何やったっけ?」
「あれ?知らんでサボろうとしとったん?次は古典」
「やっぱサボるわ」
「ちょ、ちょ、ちょ!」
即答、やった。古典の『こ』を聞いた瞬間、口開いて出てくるんがその言葉やってことは容易に想像出来たけど流石にこない即答とは。好き嫌いがはっきりし過ぎちゃうやろか、なんて幾度となく思う。今もその『幾度』に入るんやろうけど。
「………おもろないわ」
「ネタちゃうし!光が即答するからあたしの口が反抗しきれんかったんや!」
「阿呆やからやろ」
「あ、阿呆関係ないやん…!」
何、何であたしがメンタル攻撃受けてるわけ?っちゅーかいつの間にメンタル攻撃に変わったんや、光の口調。あぁ、あかん。光に阿呆阿呆言われ過ぎて、ほんまに自分が阿呆なんちゃうかって疑い深くなってきた…!そこがまさに『阿呆』なんやけど。
「と、とにかく!古典の授業嫌やとしても一緒に授業を」
「却下」
「あたしが隣」
「却下」
………。
こうも却下却下言われると悲しいんやけど、なんて光に訴えても無駄。訴える隙も無いし。やからって一方的に弄られ虐められるのは、流石に嫌なわけで。あまり使いたくはないけど、あたしなりの光対策。
「じゃあ」
「却下」
「ふーん?却下していいわけ?今日の授業全部を一緒に出てくれるなら、善哉奢ってあげようと思ったのに。」
「くっ、」
光が大好きな善哉で釣ろう作戦。使いたくないんは単純に、あたしの小遣いが減っていくから。やけどこない怯んだ光が見れるっちゅーんやから、あたし的にはプラマイゼロやと思う。
「まぁ『却下』って言われてもうたし、仕方ないか…」
「…しゃーないから授業受けたってもえぇけど。」
「えぇよ。無理強いしたないし?古典大嫌いやもんね?」
「………別に」
負けそうになると顔を反らすっちゅー光の癖はよくわかってる。だから今も、顔を反らした光の心境が手に取るようにわかるから嬉しい。いや、それよりもあたしが優位ってことの方が嬉しい。
「おおきに」わざとらしく超満面の笑みで言ってやれば、少しだけ悔し気な顔の光に優越感。意地悪やなーとは思うけど、こんなんお互い様やし。たまにはこういう立ち位置でもえぇと思う。
「…善哉、」
「ん?」
「ほんまに奢るんよな?」
「うん、約束」
小さくガッツポーズしたんが、あたしに気付かれてないとでも思っとるんやろか?バッチリ見えとったけど、光は何事もなかったかのような態度やし。
善哉の事となると我を忘れてまうんは、光の欠点やと思う。そこが可愛ぇから何も言えないんやけど、流石に無防備過ぎる気がしないでもない。
「あ、『今日の授業全部を一緒に出てくれるなら』やからね!」
「おん」
「一杯だけやで!」
「……おん」
「何、その間は」
一瞬不満そうな顔したような気がしたけど、多分気のせいやないと思う。顔だけやなくて声も不満そうやったし。大体光が言いたい事はわかってるつもり。は?一杯だけとか意味わからへんのやけど。とか、きっとそないな感じ。
「はぁ、」
「………」
「じゃあ二杯までなら」
そこで甘やかすあたしもあたしやと思うけど、それで滅多に見れない光の超満足な笑顔が見れるんやったら、それこそプラマイゼロ。寧ろプラマイプラスくらいや言うても言い過ぎやない。
砂糖が如し
(糖分の摂りすぎには注意してね?)
(……多分)
(多分って……)
(20100309)