四天ぶっく

□彼次第
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「オサムちゃん、彼女居ない歴何年?」

「ははっ、名無しさんはオサムちゃんの傷を見事にえぐってくるなぁ…」

「それで、何年?」



にっこり、という表現がぴったりなくらいの笑顔で聞けば、オサムちゃんは同じくにっこり笑顔で「もう大分」って返してきた。笑顔で返すような言葉じゃなかった気がするけど。



「へぇ、オサムちゃんってモテそうなのにね!」

「流石!名無しさんは見る目あるなぁ!」

「見た目だけ、の話なんだけどね」



言えば、ショックという言葉をそのままそっくり顔に出したと言わんばかりの表情をするオサムちゃんが目に入る。ちょっと可哀相な顔。でもそんな顔にさせたのは誰でもないこのあたしで、とりあえずごめんねと詫びを入れた。



「にしても珍しいなぁ、名無しさんがオサムちゃんに彼女のこと聞くなん。」

「そうかな、」

「彼氏、欲しくなったんか?」

「……うん、そうかもしれない。」

「え?」



キョトン、という感じで目を丸くするオサムちゃんに笑ってみせる。冗談じゃないから、その言葉に否定なんか出来なくて。「7割くらいの本気なんだけど」って付け加えるあたしに向けられたのは、オサムちゃんの難しい顔。



「嬉しいんやけど、」

「………」

「教師と生徒やからなぁ…」

「でも1人の男と女だよ。」

「ハハッ、流石名無しさんは上手いこと言うわ!」



ぶっきらぼうに頭を撫でてくるなんてセコいこと、このタイミングでするのってありなわけ?7割くらいの本気だって言ったんだから、あたしがドキドキしてることわかってるはずなのに。

「意地悪、」そう言って頬を膨らませて、いじけたみたいにオサムちゃんを見る。そうすれば罰が悪そうに目線をコートに向けられて。



「もうすぐ練習終わるよ」

「せやな」

「今日もオサムちゃん、何もしなかったね」

「オサムちゃんはここに居るんが仕事やからなぁ!」

「嘘つき」



沈黙が嫌なあたしは無理矢理に話を変ると、オサムちゃんはまたこっちを見て話始める。オサムちゃんが根っからの大阪府民で、喋りが得意であり大好きだってことをよくわかってる上でのあたしなりの対処。

すると突然、ハッとしたような顔をしたオサムちゃんは、ポケットから取り出した携帯をカチカチと弄り始めて。「メール?」なんて覗き込んだら、そこに映されていたのはただのスケジュールだった。



「何、何かあるの?」

「今日オサムちゃんの誕生日やったわ!」

「……は?」

「いやー、すっかり忘れとった!ハハッ!」

「え、えーっと…」



オサムちゃんが好きなあたしだからこその思い込みかもしれない、けれど。言い回しが明らかにわざとらしくて、それは祝ってほしいと理解して良いのか悩む。まぁとりあえず「誕生日おめでとう」と、定型文。



「なんや、オサムちゃん好きなんやったらもっと、こう、」

「でもさっき、あたしフラれたし。」

「え?え?」



オサムちゃんってこんな風に驚いたような納得出来ないような、こんな顔するんだってことを初めて知った。なんて思った刹那、オサムちゃんの言葉に耳を疑うあたし。



「ふ、フってへんで!」



吃った声と焦った顔がやけにリアル過ぎて、あたしの頭はそんな現実についていけない。きっと目が点っていうのは今のあたしみたいなことを言うんだろうな、と状況に似つかわしくない考えを脳内で繰り広げるくらいに。



「それはつまり…あたしのこと、好き?」

「あぁ、好きやで!1人の女としてな!」

「ありがとう!オサムちゃん大好き!」



笑えば頭を撫でられて、あたしのファーストキスなるものはいとも簡単にオサムちゃんに奪われた。というよりも、あたしが捧げたようなもんなんだけど。



「可愛ぇ名無しさんには1コケシやろう!おぉやろう!」

「……いや、いらない」

「そっかそっか、やっぱりいらんよな…って何でやねん!折角大好きなオサムちゃんが、」

「いらない。ノリツッコミしてもいらない。」

「ふ、フラれた…!」



流石オサムちゃん、と言うべきか。ノリツッコミしたり大袈裟な反応してみせたらあたしがコケシ貰ってあげると思って、そんなことなくてコケシなんか何したって貰ってあげないんだから。いらないってのは本音だし。でもまぁ、






(キス、してくれたら…考える)
(おっ…!)
(考えるだけ、ね)
(………)


(20100306)

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