四天ぶっく

□You are smiling
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「遊んで?…とか可愛く言ってみたりして、」

「可愛く言っても無駄や」

「でもー」

「でも、やないわ。」



べしっと額を叩かれて、それに反抗するように叩き返す。そうすれば更に強く叩き返された。光が意地悪なのはわかってるから仕方ないとは思うけど、今回はちょっと腑に落ちない。

つい先週のバレンタインデーに、あたしは光にチョコレートと善哉をプレゼントした。本当はチョコレートだけの予定だったのに、善哉善哉善哉善哉善哉って煩いから善哉も作ってあげて。



「お礼にデートしてくれるって言ったじゃん!」

「ホワイトデーにお返ししたるさかい、それで充分やろ。」

「でも先週、デートの約束した!」

「名無しさんが頭ん中で勝手に約束したんとちゃう?」

「そんなわけないもん!」



怒鳴りながらクッションとか枕とかを投げ付けると、パソコンをしていた光は舌打ち。苛々してるのか、貧乏揺すりまでしてるし。
何なのそれ。あたしばっかりデートの約束で浮かれてたってわけ?昨日の夜、実はそわそわしてたのもあたしだけ?



「断るくらいなら初めから約束しないでよ!」

「せやから約束してへんし」

「煩い!光の馬鹿意地悪阿呆!」

「お前なぁ…」



呆れたような怒ってる顔して立ち上がって、それからさっき投げたクッションとか枕とかを弱めに投げ返してくる光。正直勢いよく投げられると思って、身構えたあたしが滑稽に思えた。



「くくっ、阿呆」

「わ、笑わないでよ!」



何かもう、あたしだけが怒ったりビビったりして恥ずかしい。なんて思ってると光は突然あたしに近付いてきて、あたしと向き合うように座った。この際ベッドの上だということは気にしない。「何なの、」なんて言い返せば、光は大きく溜息。



「今日はデート行かへん」

「意地悪!」

「約束、ほんまにした覚えないし」

「………」

「せやけどデートデート煩いから、来週デートしたるわ。」



言われた瞬間、俯きかけていた顔を勢いよく上げちゃって。何だかご飯を我慢してた犬みたいだなぁ、なんて自分で思うくらいダサい。けどそんな事はどうでもいい。確実に約束したことを忘れられないように、光のカレンダーに勝手に書き込んだ。



「約束だからね!」

「はいはい」

「早く来週来ると良いね!」

「あー…それから、」

「うん?」



少しだけ頬を赤らめる光に、あたしはわざとらしく首を傾げる。光が顔を赤くするなんて滅多にないから、大体どんなことを言ってくるのかわかる。けれどわからないフリをして、こんなあたしも充分意地悪な人間だと思う。



「遊べって煩くてしゃーないし暇やから…相手したってもえぇで。」

「うん!」

「単純阿呆女」

「う、うるさい!」



またしてもクッションとか枕とかを投げ付ければいとも簡単にキャッチされちゃって、投げたフリをされるとビビるあたし。光が赤くなった時にはちょっと勝ち気だったのに、やっぱり立ち位置は変わらないのが少し悔しい。



「意地悪男!」

「やから何やねん」

「うぐっ…名無しさんは50のダメージを受けた!」

「名無しさんは力尽きた。光は100の経験値をゲット。」

「ちょっ、あたしのHPって50しかないの!?」



あたしが言い返したことの何かがツボだったらしく、笑い出す光を見てあたしも笑い出す。結局光も遊びたかったんじゃないか、楽しんでるじゃないかって思えるくらいに大爆笑。

壊れただとか狂っただとかって、多分こういうことを言うんだろうなーって実感する。でもそんな壊れて狂ってる光も大好きで、あたしはあたし自身に苦笑した。



「笑い過ぎ…!」

「っくく…!」

「光は笑い過ぎて50のダメージ!」

「名無しさんは笑われ過ぎて100のダメージ。名無しさんは力尽きた。光は200の経験値をゲット。っくく、」

「何がそんなにツボなの!」



光が理解出来ない。けど、そういえば光がこんなに笑ったのを見たのはいつぶりだっけ?随分こんなに笑ったのを見てなかった気がする。そう思うと、笑われたのも役得、か。



You are smiling


(20100220)

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