四天ぶっく

□何て顔しとんねん。
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「光光ー!」

「何やねん」

「見てわかんない?応援だよ!」



フェンス越しにそう言う名無しさんは、一体何を考えとるんやろか。流石の俺でも全く理解出来ひんし、いくら俺の彼女やからってその考えは理解したない。俺の学ラン勝手に着て、しかも額に鉢巻きで両手に手袋なん、昔ながらの応援団長をイメージしたんやろうけど。



「似合う?」

「似合うか、阿呆」

「ぶー」



何が「ぶー」や。寧ろ勝手に制服着られとる俺の方が「ぶー」な気分やし。少し睨んで殴る構えをすれば、名無しさんがフェンス越しやのに身構えるから嘲笑。



「ほんま阿呆やな」

「阿呆じゃない!」

「っちゅーか学ラン汚すなよ。」

「わかってるよ…!」

「それから応援すんな。こっちが恥ずかしいっちゅーねん。」



言えば、何故か少しだけ嬉しそうな顔する名無しさんに自然と眉にしわが寄る。何やねん、その言葉の返事なんかは知らんけど、名無しさんから満面の笑みが返ってきて。



「はっはーん!もしかして彼女に応援されてるのに照れてるのかなー?」

「ちゃうわ。お前の存在が恥ずかしいだけや、阿呆。」

「だから私の存在に照れてるんでしょ?しょしょ?」

「しょしょ?って何やねん、喧しいわ。」



大胆、さっきから名無しさんは何キャラのつもりなんやろか。テンション可笑しすぎるし、自分で言いながら笑うってどないやねん。ほんまもんの阿呆や、こいつ。



「はーあ。疲れたから座ろっかな!」

「……待てこら」

「え、はい、すんませんっ!」

「お前理由わかっとんのか?」

「全然財前!」



大声で面白くもない返事する名無しさんに再度殴る構えをしながら、眉間にシワを寄せてみせる。っちゅーかフェンス越しやのに、またビビっとるし。そんな名無しさんに思わず溜息。



「おもろくも何ともないネタに人の名前使うな。」

「はいさーせん。」

「それから調子乗んな。」

「はいさーせん。」

「で、お前さっき何話したか覚えとるか?」



聞くと「うーん」と考え出すから、大丈夫やろかなんて少し心配になったけど、少ししてぽんっと手を叩いたから一安心した。が、名無しさんは「私の学ラン可愛いって話でしょ?」とか言い出す始末。



「頭おかし過ぎるわ。」

「うん?そこの話じゃなかった?」

「それ以前にお前が可愛ぇなん一言も言ってへんやろ。」

「でも思ったでしょ?」

「とりあえず黙れやお前。」



過去に遡り過ぎやし、しかも脚色されとるとか有り得へん。何でこんな奴好きなんかもわからななる、それくらい疲れるわ。



「制服や制服。」

「あぁ汚すなって話?」

「せや。お前は運動しとる俺以上に汚すやろ。」

「別に私が悪いわけじゃなくて、汚い地面が悪いんだもん…!」

「汚い地面に座るお前が悪いんや阿呆。」



言えばまた「ぶー」なんてほざきながら頬膨らます。せやから「ぶー」言いたいんは俺の方やっちゅーねん。呆れて溜息つくと「幸せ逃げるよ?」って言われて、俺は更に溜息をつく。



「とにかく座るなら綺麗なとこ選んで座れや。」

「じゃあここは?」

「………」



笑顔で言われて、名無しさんが指差す所を見た。が、何をどう見ても泥水溜まりになっとる。それに何も答えずに居れば流石の名無しさんも空気読んだらしく、ビビり半分で謝ってきた。



「別に怒ってへんわ。」

「ほ、ほんと…?」

「嘘ついてどないすんねん。」

「良かった。」

「呆れとるけどな。」



酷い、っちゅー言葉が返って来たけど、俺は別に酷いことしてへんやろ。っちゅーか、いつの間にか普通に座っとるし。まぁ、ほんまは制服なんどうでもえぇんやけど。洗えばえぇことやし。



「名無しさん、」

「ん?あ、ごめん!気付いたら座ってた、ごめんなさい…!」

「そんなんどうでもえぇわ。」

「へ?でもさっきは…」

「えぇからちょおこっち来ぃや。」



フェンス越しに名無しさんを近付かせて、隙間から出した指で学ランの襟を掴む。名無しさんが慌てとるけど、そんなんどうでも良くて。キスしてやれば、ぽかんとしとる名無しさんが視界に入った。





(な、は、破廉恥な…!)
(お前は年寄りか。)
(ってかフェンス痛かった…)
(文句言うなや。)
(はいさーせん。)



(20100110)

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