四天ぶっく

□心は常に春色なんです
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「秋祭りなんやけど、」



学校で突然誘われて、私は何の躊躇いも無く頷いた。彼氏から祭に行こうと誘われたんだから断る理由がない。だからこそ私は即答し、彼氏である白石蔵ノ介と一緒に祭に行くということを当然の事ながら楽しみにしていた。



「あ、踊りやってる!!」

「折角やし、見てから出店回ろか?」

「うん」



それを彼は決して裏切らない。見てから出店とか言いながらもここで待ってろと言い出した、かと思えば戻ってきた時の彼の手には2本のりんご飴。



「そこが好きなんだよね」

「え?うん?お、おおきに…?」



わざとらしく声に出して言いながら蔵ノ介が持つりんご飴を1本もらう。蔵ノ介は何の事だかわかってないみたいで首を傾げているが、そこは見て見ぬふりだ。



「秋祭り、か…」

「どないしたん?」

「もう秋なんだなぁって。」



ペロッとりんご飴を舐めると独特の味が口の中に広がって、夏祭りの記憶が脳裏に蘇った。あの日もこうやって花火を見ながらりんご飴を食べて。



「っていうか秋祭りにりんご飴ってあるんだね。」

「俺もさっき気付いたんや。好きやろ、りんご飴。」

「好き」



それからしばらく踊りを見て、私達はゆっくり出店を見て回った。何も言わずに手を繋いでくれて、おまけに私の少し前を歩いてルートを作ってくれてる。



「名無しさん、ちゃんと歩けとる?」

「うん、大丈夫」

「せや。俺タコ焼き買うてくるさかい、あそこで座って食べようや。」

「それ良いね!!じゃあ私はあそこで待ってるから」



突然何を思ったのかそう言い出した蔵ノ介に少し驚きつつも、私は蔵ノ介を見ながら頷いた。と同時に蔵ノ介は駆け足でどこかへ行ってしまった。そこで気付いた事が1つ。蔵ノ介が居ないと私が歩けるような道が無くなり、しかも自然と人事に押されてしまうのだ。



「蔵、」



呼んでも蔵には届くはずもなくて、しばらくしてやっと出れた人の少ない場所は私の知らない所だった。ベンチに腰掛けながら小さく溜息をつく。簡単に言えば迷子っす、はい。



「この歳で迷子か。」



けっ、と小石を蹴ったがあまり飛ばなくて、なんだかどうしようもない気持ちになった。近くで鳴いてる虫達が私を馬鹿にしてるようで腹立たしい。



「くーららー」

「何やねんハイジ」

「クララは関西弁じゃな……い?蔵!?」



ふわっとタコ焼きのニオイがしたかと思えば、それとほぼ同時に大好きな彼の声と頬に暖かい何かが。見上げれば呆れたような顔をした蔵ノ介が私の頬にお茶を当てていた。



「随分流されたんやな、親指姫さん。」

「親指姫はか弱いから抵抗する力が無かったんです。」

「まぁ居ったからえぇわ。怪我とかしてへん?」

「うん、大丈夫」



笑って見せれば、蔵ノ介も笑って私の頭を撫でてきた。それからお茶を受け取って一緒にタコ焼きを食べ始める。因みにお好み焼きも買ってきたみたいだ。



「蔵ってホント美味しそうに食べるよね。」

「まぁ美味いからな。なんや、ヤキモチ焼いとるん?」

「イミガワカリマセン」

「冗談や冗談。」



ハハッと笑いながらお茶を飲む蔵はやっぱり愛おしくて、私はそっと蔵にピッタリ体をくっつけた。食べにくいけど暖かい。



「ん?どないしたん?」

「好きだな、って確認。」

「う、ん?確認せんでも好きなもんは好きやろ?」

「そうだけど好きだな、って。」



首を傾げる蔵ノ介にぎゅーってくっつきながら答えれば、蔵ノ介もぎゅーとくっつきながら答えてきた。これから季節はどんどん寒くなっていくけど、私の心は寒くなりそうもない。





(20091013)

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