比嘉ぶっく

□奪われた
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「めっりーくりすま、」

「留守です。」



凛が全てを言い終わらないうちに、あたしはドアを閉めた。



「ぬ、ぬーんち!?」
  (何で!?)



そう大声で叫びながらドアを叩く凛に、あたしは「赤い服の不法侵入者はお断りしてるんで。」と返す。
本当は、そんなんじゃない。遊びに(?)来るなんて聞いてなかったし、しかもサンタさんの格好してるなんて予想もしてなかった。だから、凛のサンタの服以上に真っ赤になったこの顔を見られたくないだけ。
暫くして漸く落ち着いた頃、あたしはそっとドアを開けた。



「あ、開いた。ぬーんち閉めるんばぁ!」

「だから、その、赤い服の不法侵入者は、」

「やくとぅピンポンしたあんに。」
  (だからピンポンしただろ。)



だから普通に出ちゃってあんな目に遭ったんじゃないか!と、反抗することはできず、まぁそうだけど、と曖昧な返事をする。常日頃からカッコいいとは思ってたけど、サンタの格好をしてもカッコいいだなんて、そんなことは知らなかった。
あたしの前でポーズをとって「カッコいいあんに?」と言ってくるあたり、本人に自覚はあるらしいけど。っていうか自分でカッコいいとか言うな。



「とにかく入りなよ。」

「わーい!」

「わーい、って……」



兎にも角にも玄関を通してあげると、凛は嬉しそうに声を上げて家の中に入ってきた。あたしの家に来るのが慣れているせいか、玄関を通った後はずかずかとあたしの部屋に入り込む。この自分勝手なところはよくわかってるから、あたしも今更何も言わないけど。
例え、飲み物を取りに行って部屋に戻ったときに、帽子を取ってまったりしているサンタの姿が目に入っても。いいの。凛のそういう適当な感じはわかってる、から……。



「いやでも、流石に……」

「ん?」

「サンタの格好なのに、なんかもう、はあ。」

「ぬーがや。」
  (何だよ。)

「何でもないですー!」



仮にもサンタの男が人様の家で胡坐をかいて、ゴクゴクと差し出されたジュースを飲み干して、終いには持ってきていたプレゼントを入れる袋の代わり(と思われる)大きなカバンを漁りだすなんて。これがいつもの凛の姿だったら何も思わないと思うけど、サンタさんの格好で何てことしてくれるんだ。
ジュースを注ぎ足しながら大きな溜息をつくあたしに、凛は疑問符を浮かべる。



「まぁまぁ、ぬーがらわからんしが元気だせー。」
  (何かわかんないけど元気出せよ。)

「誰かさんがサンタの格好して、あたしにガッカリさせるようなことするから、」

「うり。」
  (ほら。)

「何、とつぜ……」

「ぬーって、サンタやプレゼント持ってくるやつあんに。あ、あと、ケーキも。」
  (何って、サンタはプレゼント持ってくる奴だろ。あ、あと、ケーキも。)



唐突に何かを差し出され、今度はあたしが疑問符を浮かべるが、凛はこれといった説明もなしに「うり、やる。」とソレをあたしに押し付けた。何かわからないそれを恐る恐る手にして、ゆっくりと袋を開ける。袋を開いたらパッチンってなるやつだったり、ブルブルブルってなるやつだったりしたらどうしようかと思ったけど、そういうものじゃないらしく、安堵。
けれど安心できないと思ってゆっくりと中の物を取り出す。不意に、シャリ、と音が鳴って冷たい何かが掌に落ちた。



「ひゃ、」

「ふは、ビビり。」

「う、うっさい!凛がいつも悪戯ばっかりするから敏感なだけ!」



薄々自分でもわかってたけど、ハッキリとそう言われると否定できなくて悔しい。ケラケラと笑う凛に軽い拳骨を一発食らわせてから「ま、見てみれー。」と言われて、咄嗟に綴じた掌を開いてみる。が、しかし。



「……え、なにこれ。」

「何ってネックレスあんに。」

「だってなんか、歪っていうか……」



星、というか。ヒトデ、というか。よくわからない飾りのついたネックレス(らしきもの)をじっと見つめると、凛は少し顔を赤くして「星、さぁ……」と呟いた。話を聞けば、クリスマスだからってあたしの為に裕次郎に教えてもらって作ったらしい。
だからこんなに歪な星に、そう言ってさっきのお返しとばかりにケラケラと笑ってやれば、凛は顔を赤くしたまま頬を膨らませた。



「わん、ちばったもん。」
  (俺、頑張ったもん。)

「わかってるよ。にふぇーでーびる。」
  (ありがとう。)

「……やしが、」
  (だけど、)

「あたし、凛のこと好きだから、何でも嬉しいよ。」



笑われたことがそんなにショックだったのか、少し俯く凛にそう言う。すると、さっきまで真っ赤だったはずの凛が不意に真剣な顔をして「知ってるさぁ」なんて言うから、思わず「う、うるさい!」ともう一度軽い拳骨を食らわせた。
さっき一瞬取り戻した、あたしが優勢という立場が、簡単に崩れ去る。凛がニヤリと笑って、顔を近づけて、唇を奪われてからあたしが思ったことは一つ。



サンタに奪われた
(サンタさんは与えるだけじゃないの?)
(わんのキスを“あげた”んさぁ。)
(…………。)






20111224.マガジンクリスマス企画

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