比嘉ぶっく
□女は……らしい
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「わったさん、永四郎が……」
「…はぁ、」
「わじってる?」
「別に。」
いつもそうだ。名無しさんと永四郎が従兄妹同士だから、他の家同士よりも仲が良いのはよくわかる。けど、それを簡単に受け入れられるかどうかは、話が違うんじゃないか。兄弟ならまだしも、わんは“従兄妹”に負けるくらいの存在だと思うと、悔しくて、ムカつく。わんが名無しさんの彼氏だって知ってて遊びに来る永四郎も永四郎だけど、それを許しちゃう名無しさんも名無しさんだ。
「わっさいびーん…」
「もうゆたさん!永四郎ぬとぅくるんかい行けー!」
「えっ、あ、うん……」
そんでもって、そんな名無しさんに八つ当たりしちゃうわんもわんだと思う。もっと心が広い男になれたらいいのに、なんて思うけど、どうしてもムカつくと自分を抑えられない。そして後から自分が後悔するってわかってるのに、最低だ、わん。
けど、意地っ張りのわんは「わったさん」と言い残して帰って行く名無しさんのしょぼくれた背中に、何も声を掛けられなかった。
…………なんてのは冗談で、気付けばわんの手の中にある名無しさんの腕に、一瞬だけ、動揺。慌てて咄嗟に手を離せば、顔が異常に熱くなるのを感じた。
「り、ん…」
「やっぱならん!ぃやーやわんぬいなぐあんに!?」
「わったさん、凛。」
「……は?」
「わん、凛んかいうぬくとぅばあびって欲しかっただけだったんさぁ。やしが全然あびらんやくとぅ…」
それが何を意味しているのか、少しの間、理解できなかった。
「わんの彼女」だと言ってほしかった、それは、つまり……?
女は男を動かすのが好きらしい。
20110508.闇風光凛