比嘉ぶっく

□君のソレが好き
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ゴーヤーは確かに苦いけど、あたしは別に嫌いじゃない。それでも、毎日のように食べたら飽きるということをあたしのおばぁは知らないのだろうか。

そんなこんなで5月8日のゴーヤーの日を前にして、あたしはゴーヤーが食べれなくなった。



「だからあたし、ゴーヤーパーティーに行かないの。」

「……わぁった。」

「ごめんね、ひろ」

「わんが治すさぁ。」



あたしの台詞を遮るその言葉に、あたしはキョトンとしてしまった。“治す”っていうのは、あたしがゴーヤーを食べられるようにするってこと?それはつまり、あたしにゴーヤーパーティー(部活主催)に来てほしいってこと?
1人で勝手に妄想してニヤけてるあたしの頭を撫でた寛は「待ってれー」とだけ言い残してあたしの前から去っていった。





「…それで、何であたしの前にはこんなに沢山のゴーヤー料理が並べられてるのかな?」

「かめー」
(食べろ)

「食べたくないって言ってるんですけど、あたし。」


あたしがそう言えば、あからさまに落ち込んだような表情をする寛を見るとこっちが泣きたくなるけど、だからってゴーヤーを食べたいとは思わない。「めーまでしちゅんだったあんに…」(前まで好きだったのに…)なんて悲しそうに言われたって、食べられないものは食べられないんだから仕方ないじゃないか。



「あんしぇー、すり潰して」
(じゃあ、すり潰して)

「すり潰しても味は変わりませんー!」

「……チッ」

「え、寛!?」



突然、耳を疑うような音が聴こえてきて、あたしが思わず見た先には性質の悪い不良みたいな表情の寛が。簡単に言えば「面倒臭ぇなぁ」みたいな顔。
あくまでもそう見えただけだし、一瞬だけだったから勘違いかもしれないけど。もしも本当に面倒とか思われてたらどうしよう。
ちら、ともう一度寛の顔を見れば、「どうした?」と言わんばかりの目をして見つめ返された。



「も、もう少し違う食べ方を試してみたいなー…なんて。」

「……かんげーてみる。」
(考えてみる。)

「ちょ、ちょちょ、ちょっと待って!どこ行くの!?」

「ヒント貰ってちゅーさぁ。」
(ヒント貰ってくる。)



ヒント?アドバイス?
その言葉に少しだけ嫌な予感がしたあたしは、寛の返事なんて聞かずに寛に着いていった。するとそこに現れた彼は、自ら自分が確信犯だと言っているかの様な笑みを向ける。
つまり、それは、どういうことなんだろう。
聞けば、さっきのも彼、木手永四郎に聞いて出てきた案らしい。



「寛、グルじゃないよね?寛は真剣だよね?」

「あい?」
(え?)

「…グルではなさそうだけど、きっと騙されてるよ、寛。」



っていうか絶対に聞く人間違ってる。
このクソ悪魔みたいな人間と天使みたいに純粋な寛が友達ってこと自体、あたしにとってはあり得ないのに。まぁ永四郎はゴーヤー嫌いを克服して今に至ったらしいけど、それでもこいつにだけは頼りたない。っていうか、あたしは嫌いになったんじゃなくて、ゴーヤーに飽きて食べれなくなっただけで…………



「…………あれ?」

「ん、ちゃーさびたが?」
(どうした?)



もしかしたらあたしは、重大なことに気づいてしまったのかもしれない。
あたしが頼んだ訳じゃないけど、あたしから言い出しておいてこんなことを言うのは最低だと思う。折角あたしの為に、寛が頑張ってくれたっていうのに。それでもこのまま何も言わないよりはいいと思うし、早く解決して寛と二人きりでゆったりとした時間を過ごしたいし。



「あのね、あたし、」

「ぬー?」
(何?)

「ゴーヤー、嫌いじゃない。」

「……?」

「もしかしたらあたしの言い方が悪かったかもしれないけど、あたし、別にゴーヤー嫌いになったんじゃなくて。その、食べ過ぎて飽きてただけて言うか…」


怒られたり呆れられたりするのを覚悟の上で、ちらりと上目遣いで寛を見上げる。そうすれば不意に大きな手があたしに向かって伸びてきて、あたしの頭を優しく撫でてくれた。それから「ゆたさんやー」(良かった)なんて声が聞こえてきて、笑顔があたしに降り注ぐ。



‐君のソレが好き‐



(嬉しそうにゴーヤー食べてるキミが好きだ、くらい素直に言いなさいよ。)
(っ!)





20110526.闇風光凛

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