比嘉ぶっく
□蝶々
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「ったく!何で皆は男なのに堂々と着替えられないわけ?」
「名無しさんぬせいやっしー!」
(名無しさんのせいだろ!)
「はぁ?何であたしのせい?頭おかしいんじゃね?」
「くっ…あびりけーせねーらん!」
(言い返せねぇ!)
馬鹿みたいだ。今わんの目の前でくだらない口論をしている凛と名無しさんは、ここ等辺の地域で1番バカップルってことで有名。まぁこの際それはどうでも良いとして、今問題なのは名無しさんが部室内に居ること。
「名無しさんんかいいなぐぬ恥じらいやねーらんばぁ?」
(名無しさんに女の恥じらいはないのか?)
「恥じらい?んなもんねぇし!つか早く着替えてくれないとこっちも困るんだけど。裕次郎いつまでジャージで居るつもり?」
「うわあああ!凛ぬいなぐがまぶやー!」
(凛の彼女が怖い!)
「名無しさんがまぶやーぬをわんぬせいみたいんかいさんけーふらー。」
(名無しさんが怖いのをわんのせいみたいにすんな馬鹿。)
「凛は怖いって言葉否定しろよ馬鹿。」
名無しさんが言うと同時にベシッと痛そうな音がして、見れば凛が痛そうに頭を押さえていた。半泣きなところを見ると、本当に痛かったんだろうと思う。可哀相に。
「良いから皆早く着替える!あ、永四郎の筋肉すげー!」
「なっ、触るのやめなさいよ…!」
「良いじゃん、減るもんじゃないし。」
「減る減らないの問題じゃないでしょ!ほら、平古場クンが凄い形相で見てるじゃないですか。」
確かに、凛は凄い形相をしてる。眉間にシワを寄せて、元々吊り上がった目は更に吊り上がって。でも口は泣きそうになってるから、結局凛がどんな心情なのかはわんにはわからない。
「あたしは見られてないし。」
「俺が見られてます。」
「永四郎、たっくるす…!」
(永四郎、ぶっ殺す…!)
「甲斐クン、どっちかを止めてください。」
「ははーん?あいどんとのう、じゃぱにーず!へるぷのー!のー!」
助けを求められても困る。大体、永四郎に対処出来ないものをわんが対処出来るはずがない!威張ることじゃないんだけど。外人風に答えたわんは、3人に背を向けて着替え始めた。
「わんだって筋肉あるやっしー!」
「違う違う違う!あたしはこんなひょろいの求めてないし。もう少しガッチリした体を…あ、裕次郎の肩甲骨すげ!」
「ひゃいあ!きゅ、急んかい触んなふらー!」
(急に触んな馬鹿!)
着替え始めた、はずだったのに、突然後ろから背中を触られて。勿論、脱いだ服を思わずまた着ちゃったし、変な声も出してしまった。何でわんまで巻き添えを食らわなきゃいけないんだろう。
「とにかく!わんぬ方が肩甲骨も筋肉もゆたさん!」
(わんの方が肩甲骨も筋肉も良い!)
「どれどれ、触らせてみなさい!うわ凄い!こんなに筋肉あったっけ、凛!もう大好き!」
「よっしゃ!」
「キミ達、何かズレてますよ。」
「ズレてる?どこが?全然ズレてないし大好きだし!今ここでキスしてやっても良いけど見たい?」
いや良いです、なんて永四郎が答えようとしたんだろうけど、その言葉は名無しさんの「わかってる!」って言葉に遮られた。結果的に全然わかってなくて、名無しさんと凛が堂々とキスなんかするから、わんは見て見ぬふり。
「凛大好き!あ、何で皆顔赤くしてんだよばーか!」
「ぃやーぬせいやっしー!」
(お前のせいだろ!)
「あたしのせいか!まぁ気にすんなって!」
「名無しさん!わ、わんもぃやーがしちゅん!」
(わんもお前が好き!)
「マジで?まままマジで?やばいめっちゃ嬉しい!」
めっちゃ嬉しい、その言葉はもう何万回も何億回も聞いた。それなのに名無しさんはまたそう言うし、凛はまた笑顔になる。だから有名バカップルなんだよな、なんて少し感心しちゃったりするときもあるんだけど。
「やったーけーりよー!」
(お前等帰れよ!)
やっぱりうざくて仕方がない。
蝶々
(美しくもあり、鬱陶しくもある)
(ん、何か言った?)
(いや、何も。)
*リクエスト*20100125.闇†風