立海ぶっく

□君の笑顔に涙する
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誕生日に彼女から来る「会いたい」のメールは、つまり、プレゼントとかパーティーとかを期待しても良いということじゃろうか。と、悩むことかれこれ1時間。名無しさんの家に向かっている今も、名無しさんがガチャリと玄関を開けた時にどんな顔をすればいいのか定まっとらん。
道の途中でふと、交通安全用のミラーが目に入り、試しに―――勿論、周りを確認してから―――鏡に向かってニコッとしてみる。



「(…………。)」



やっぱりニコッとするのは違うみたいじゃ。そもそもニコッとしたところで、俺の誕生日なんかまったく関係のない呼び出しじゃったらどうする気なんじゃ、俺。しかも「そんなにニコニコしてどうしたの?」なんて聞かれでもしたら、激しい落胆と羞恥のあまり死ぬぜよ。

……っていうか、今日は本当に俺の誕生日じゃろうか。

突然、何の前触れもなくそんな考えが頭を過り、慌てて携帯を確認するが、携帯はしっかりと12月4日を表示しとって。胸を撫で下ろすと同時に、俺らしくない俺の行動に苦笑した。
じゃけどやっぱり、期待するべきじゃない。



「(…………。)」



ということで、少し歩いた先にまた見つけたミラーに向かって、今度は―――当たり前だが、しっかりと周りを確認してから―――至って普通の顔をしてみる。が、しばらく鏡の中の自分と向かい合ったのちに、ふと思った。

……普通、ってどんな顔じゃ。

こんなに愛想悪いんか?ちょっと微笑み気味で……あれ、こんなに愛想良くないじゃろ、俺は。じゃあちょっとやる気ない感じで……って、誰じゃこれ!やる気なさすぎるじゃろ!こんな顔で名無しさんに会えるわけなか!



「(…………。)」



って、心の中で自分にツッコむ俺が一番恥ずかしいぜよ……。しかも端から見たらこれ、一人で百面相しとるただの馬鹿じゃろ。
はぁ、と溜息をついて、鏡に目をやる。
そもそも、たかが女一人に何を惑わされとるんじゃ俺は。……いや“たかが”ではないんじゃけど。でもこれから先、何十回と誕生日を迎えるじゃろうし、名無しさんの誕生日も迎えるし、いつかはプ、プロっ、ぷぷぷプロポ、ぽー……もするつもりじゃってのに、こんなことで緊張(?)するなん有り得ん。



「(……よし、もう何も考えん。)」



そうじゃ、無心じゃ。無心になるんじゃ。そうすれば絶対うまくい、うわっ!



「痛……。」



石ころに躓くなんて、不覚じゃった。無心になるとか言って目まで閉じて歩く馬鹿がどこにいるんじゃ、ホント馬鹿な奴じゃ。……俺は。
さっきよりも深いため息をついて、俺はとぼとぼと名無しさんの家に向かい、やっと辿り着いた名無しさんの家の前で、深く深く深呼吸をした。



「(もうどうにでもなればよか!)」



そして……。



キミの笑顔に涙する

(ハッピーバースデー!!)
(……っ、う、うぐっ……ふぇ、っ、)
(え!?な、何、何で泣くの!?)
(ドキドキして怖くて恥ずかしくて悲しくて痛くて最低じゃ最悪じゃアホーっ……!)
((来るまでの間に一体何があったの……!?))


(20111204)マガジンリクエスト

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