「めりくり、雅治!名無しさんサンタから愛のプレゼントだよ!」
突然じゃった。何の前触れもなしにチャイムが鳴るから、冬特有のダルい体を無理矢理起こして玄関に向かえば、そこには、人の家だということなんて全くお構いなしで既に家に入り込んどる質の悪いサンタが。サンタなんて不法侵入のおっさんじゃろ、って言ったのは確かに俺じゃが、それが不法侵入していい理由になるわけがなか。俺を見るなり抱きついてくる名無しさんの両手を片手で押さえつけると、膨れっ面で俺に目を向けた。
「痛い。」
「不法侵入しておいて文句言えるわけないじゃろ。逮捕じゃ。」
「愛を届けに来ただけなのに…」
「犯罪者からの愛はいらんぜよ。」
「意地悪!」
痛っ。
不意打ちだったせいか、思わず大して痛くもないのに声が漏れる。彼女に腕を噛まれることを誰が予想出来るかっちゅーんじゃ。
力業じゃと反抗できないのをわかってかわからずか、名無しさんは俺の腕を甘噛み。そして向けられた悪戯な笑みにさえも愛しさを覚えるのは、俺が既に名無しさんへの愛の末期症状にまで到達してる証拠なんじゃろうと思う。
「あっかんべーっだ!」
「お前さん、愛をプレゼントする気ないじゃろ。」
「ふふっ、」
聞けば何も答えずにただ笑って逃げる様子を見たところ、本当は何も用意してないんじゃないかと思う。まぁ俺としては特に欲しいもんも思い付かんけぇ構わんが。
不法侵入した挙げ句、人の家で鬼ごっこ擬きの行動?そんなサンタが本当に存在するなら、俺は今すぐサンタでも絶対には入れない家に住みたい。名無しさんだから許されるんじゃよ。
「名無しさん、いい加減にしんしゃい。」
暫くして静かになったのを機に、俺は名無しさんが居るであろう俺の部屋に向かって話し掛ける。が、返事はない。理由はわからなくもないが、一応名無しさんのお気に入りの場所(俺のベッドの上)に向かえば、案の定そこには名無しさんが寝ちょる。
そこから回転はマッハと言っても良いくらい速く、そして自分の都合の良さに関しては最高に俺の頭は働いた。
「名無しさん、」
「ん、うぅ…」
起きないと見た。これは好都合じゃ。
「お前さん、何しに来たんじゃったっけ?」
「雅治、愛を…」
「“愛を”っちゅーことは襲われても文句は無しぜよ。」
欲しいもんあったぜよ、名無しさん。俺は何よりもお前さんが欲しい、ただそれだけじゃ。プリッ。
聖なる夜だろうが俺には関係ない
101225.闇†風